Google親会社「100年債」発行から見える、AI時代のインフラ覇権獲得への執着:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
Googleの親会社である米Alphabetが、償還期間が最大100年という超・超長期社債、いわゆる世紀債を発行した。この「超長期の借金」には、AI時代の新たなインフラ覇権に対する同社の執念が隠れている。
6.125%という金利は、果たして「高い」のか
今回の発行で設定された金利は6.125%であるという(※2)。つまり、投資家が元本を確実に回収するためには、向こう17年にわたってGoogleの経営状況が悪化しないという前提が必要だ。
※2:ロイター『Alphabet sells rare 100-year bond to fund AI expansion as spending surges 』
Alphabetの信用力は一部の主要国政府すら上回る「AA+」の格付けが得られているが、100年後にならないと元本が帰ってこないとなれば金利は相応に高くなる。
現在の日本国内の感覚では“サラ金並み”だが、実は、年利6.125%という金利は、同社にとっては「安い」資金調達であると考えられる。
最大のポイントは「インフレ」である。もし今後100年間、世界で年平均3%のインフレが続けば、通貨の価値は100年後には現在の約20分の1にまで目減りする。
歴史的な推移をみても、インフレがもたらす借入金の圧縮効果は目覚ましい。金価格は100年で239倍、つまりドルの価値は相対的に239分の1まで下落している(※2月18日執筆時点)。
今回、Alphabetは日本円換算で約4兆8400億円を調達する見込みだ。仮にこれまでの世界で起こったインフレの系譜をたどるのであれば、100年後の4兆8400億円は、今の通貨価値にして202億円程度にしかならない可能性も秘めている。
もしかしたら同社は、価値の高い「現在のお金」を借りて、AIという金の卵を産むインフラを構築し、100年後にインフレした未来のお金で元本を返済すればよいと考えているのかもしれない。もちろん、利息は毎年発生するため、相応のインフレが起きない限り利息負担が膨大になるリスクはある。
しかし、年数が経つほどその負担は事実上低減していくことになる。インフレは負債を溶かす──この歴史的な鉄則を、同社は100年という壮大なスケールで実行に移したのだ。
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