Google親会社「100年債」発行から見える、AI時代のインフラ覇権獲得への執着:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
Googleの親会社である米Alphabetが、償還期間が最大100年という超・超長期社債、いわゆる世紀債を発行した。この「超長期の借金」には、AI時代の新たなインフラ覇権に対する同社の執念が隠れている。
規制当局へのけん制も?
さらに、この巨額の借金には、財務上の計算を超えた「政治的な盾」としての側面も見え隠れする。
現在、Googleは米欧の規制当局から独占禁止法に基づく厳しい追及を受けており、実現可能性こそ低いものの、たびたび事業分割や解体の可能性すらささやかれる事態に及んでいる。
もし当局がGoogleを解体し、その収益力を削ぐようなことがあれば、100年債を保有する世界中の年金基金や保険会社が甚大な損失を被ることになる。
自国の高齢者の生活を支える年金原資を危機にさらしてまで、テック巨人の解体を強行できる政治家は存在するのだろうか。「100年後の返済」という債務を通じて、世界中の主要な機関投資家、ひいてはそれらを通じて年金受給者となる一般国民を自社のステークホルダーとして巻き込む──そんな同社の戦略も見え隠れする。
100年債の先輩「モトローラ社」の教訓
もちろん、100年間Alphabetが無傷で済む保証はない。市場が今回の世紀債を見て思い起こすのが、1997年に100年債を発行した当時の王者、モトローラの事例だ。
当時、携帯電話市場を席巻したモトローラは、その後iPhoneの登場というイノベーションに乗り遅れ、主役の座から転落した。
衰退したとしても、法人が存続しているため、100年債の利払いは継続されているようだ。しかし、2097年よりはるかに前に、それが続くか不透明になってしまった。
Alphabetもまた、生成AIという新技術が、自らの稼ぎ頭である「検索エンジン+広告ビジネス」そのものを破壊しかねないというイノベーションのジレンマ状態に位置している。同社がAIインフラにこれほど執着するのは、かつてのモトローラのように時代の遺物になることを防ぐための防衛戦なのかもしれない。
かつてのモトローラが、携帯電話という製品で天下を失ってもなお、法人を存続し、利払いを続けられたのは、同社が通信の基礎特許やインフラという「土台」を持っていたからだ。
Alphabetも同じ道を歩もうとしている。たとえ将来、対話型AIの普及によって現在の「検索窓」が消滅したとしても、その裏側で動く巨大なAI基盤を握り続けていれば、22世紀においても引き続き競争力を維持できることだろう。
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