AIに「判断」させ、RPAに「実行」させる――現場が使いこなせるAIエージェントがBPRを加速
AIエージェントが台頭したことで、RPAが再び注目を集めている。AIに「判断」させてRPAに「実行」させる相乗効果は、次世代の自動化戦略とBPRの可能性をどのように変えるのか。
2022年に「ChatGPT」が爆発的に普及し、多くの企業が生成AIを導入した。2025年以降は、課題を与えられたAIが自律的に情報を収集してアウトプットを生成する「AIエージェント」が脚光を浴びている。
このような流れに伴い、業務の自動化・省力化の手段として多くの企業が利用しているRPAにも再び注目が集まっている。「AIエージェントがあればRPAは不要ではないか」という議論も散見されるが、NTTデータでRPAやAIのビジネスに携わってきた林倫太郎氏は、これに異議を唱える。
「RPAは定型業務を自動化する一方、生成AIはRPAが対応できない非定型業務の領域で人間に近い判断を可能にします。両者を組み合わせれば、RPAだけではできなかった『人の判断』を伴う業務をできるようになり、業務全体を通して一気通貫の自動化が可能になります」
丸紅情報システムズ(以下、MSYS)でRPAシステムの企画や開発を手掛けてきた安藤久人氏も、RPAとAIの新たな関係性を次のように述べる。
「RPAはルール通りに動くことは得意ですが、曖昧な指示では動きません。人間は『図面のこの部分を見ておいて』と言われれば文脈を理解できますが、従来のロボットはそれができませんでした。AIエージェントはまさにこの『文脈理解』や『判断』を担い、RPAと補完関係にあります。AIが判断してRPAが実行する。この連携が次の自動化の鍵になるでしょう」
両者は「RPAかAIか」の二項対立で考えるのではなく、補完し合う「オーケストレーション」が目指すべき形と言える。今までのように個別のタスクを自動化・省力化するだけでなく、業務全体を根本的に見直してより効率的なワークフローを再構築する「BPR」(ビジネスプロセスリエンジニアリング)の機運も高まるだろう。
日本企業の課題を解決するAIエージェント「つなぎAI」
AIとRPAの連携に注目が集まる中、NTTデータが提供を開始したのがAIエージェント基盤「つなぎAI powered by Dify」(以下、つなぎAI)だ。
多くの日本企業が生成AIの活用でつまずく要因として、どのLLM(大規模言語モデル)を選定すべきかという迷いや、プロンプトエンジニアリングの難しさ、機密情報を扱う上でのセキュリティへの不安などが挙げられる。海外製のAIツールは高機能であっても、UIが英語だったり日本の商習慣に合わなかったりといった障壁がある。
つなぎAIは、こうした日本企業の課題を解決するために設計された製品だ。LangGeniusのAI開発プラットフォーム「Dify」に、NTTデータが日本市場向けのカスタマイズと品質保証を付加している。
NTTデータの加藤哲氏は、つなぎAIの特徴を次のように説明する。
「先進的な技術をベースにしつつ、日本企業が安心して使えるように私たちがローカライズをきめ細かく施しています。SaaSなのでサーバ構築や複雑な契約手続きは不要で、最短10営業日で利用を開始できます。LLMの利用料も包括した契約なので、LLMの個別契約は不要です」
最大の特徴は、その名の通り“つなぐ”力にある。複数のLLMを目的に応じて切り替えられる柔軟性に加えて、RAG(検索拡張生成)による幅広いデータの利用も容易だ。
“つなぐ”対象はデータだけではない。企業に定着している自動化資産、すなわちRPAとの連携こそがつなぎAIの真骨頂と言える。代表例が、多くの国内企業が利用しているRPAツール「WinActor」だ。
「つなぎAIのエージェント作成画面は、WinActorのシナリオ作成画面と操作感が似ています。ノーコード/ローコードで、ブロックを組み合わせるようにAIエージェントを直感的に構築できます。WinActorでシナリオを作っていたユーザーなら、違和感なくAIも活用できるはずです。この『親しみやすさ』は、現場への浸透を加速させるポイントだと考えています」
WinActorはNTTアドバンステクノロジが開発しており、NTTデータは開発元と極めて近い関係にある。国産RPAで高いシェアを誇るWinActorとの連携機能を標準で実装している点は、つなぎAIの大きな強みと言える。
「WinActor×つなぎAI」が開く自動化の道
WinActorとつなぎAIを連携させることで、どのような業務変革が可能なのか。
注文メールの処理を自動化する場合、従来は定型フォーマット以外のメールはRPAで処理できず、人が内容を確認する必要があった。つなぎAIを介在させることで、AIがメールの文面を解析して必要な情報を抽出し、構造化データに整形してWinActorに渡すことが可能だ。
ただ、いくらツールが優秀でも、それを現場で使いこなせるかどうかは別問題だ。AI×RPAのソリューション構築には、業務の棚卸し、プロンプトの設計、エラー時の例外処理などのノウハウが求められる。ここで重要な役割を果たすのが、WinActorの販売特約店であるMSYSだ。
MSYSはユーザーの「自走化」も支援している。その一つが「WinActor MSYS追加ライブラリ」だ。WinActorの標準機能だけでは実行が困難な処理や頻繁に使われる複雑なロジックなどをMSYSがライブラリとして提供している。
安藤氏は、MSYSの支援について次のように述べる。
「『やりたいこと』は明確でも、どのように実装すれば実現できるのか分からないケースは多々あります。それらを解決するために、WinActor からブラウザを介さず利用できる API 接続部品やAIからの回答をRPAで扱いやすい形式に変換するライブラリなどを開発しています。技術的に難しい処理はライブラリに任せて部品を配置するだけで、高度な連携が実現します」
人材育成の面でも、MSYSはさまざまなサポートを手掛けている。MSYSの青栁紀行氏は、ユーザーの成熟度に合わせた支援の重要性を説く。
「ユーザーによって、RPAやAIの習熟度は千差万別です。私たちはニーズや習熟度レベルに応じたさまざまなeラーニング教材を提供しています。ツールを入れて終わりではなく、ユーザー自身が改善を回せるようになる『自走化』まで伴走するのがミッションです」
実際、MSYSの支援を受けた多くの企業が、当初は外部委託していたシナリオ作成を内製化して、AIを組み込んだ業務フローを自社で構築しているという。
「AI×RPA」の価値を訴求
現場に即した支援が可能な背景には、製品を提供するNTTデータとユーザーに近い距離で伴走するMSYSとの間に築かれた、密接な共創関係がある。
青栁氏は、両社のパートナーシップについて次のように語る。
「NTTデータさんには、私たちが拾い上げた『ここが使いにくい』『もっとこうしたい』というユーザーの声を開発元にフィードバックしていただいており、それが実装された例もあります。つなぎAIのような新製品も開発段階から情報を共有していただき、市場を共に作るパートナーとして協業しています」
加藤氏もMSYSの存在を心強いと語る。
「MSYSさんは、ユーザーの“かゆいところ”に手が届くサポートや独自ライブラリの開発を通じて、製品の標準機能だけではカバーし切れない“ラストワンマイル”の課題を解決してくださっています。AIとRPAの融合をさらに進める上でも、現場の解像度が高いMSYSさんとの共創は不可欠だと確信しています」
今後は共同のウェビナー開催やWinActorとつなぎAIを組み合わせたユースケースの共同開発など、連携をさらに強化する方針だ。両社がこれまで築き上げてきたパートナーシップは今後も大きな武器になると安藤氏は力説する。
「個人的には、当社とNTTデータさんはもはや『一蓮托生(いちれんたくしょう)』の関係だと思っています。WinActorとつなぎAIはもちろんのこと、それ以外にもさまざまな製品やサービスで協業しているので、今後はより広範な領域で協力体制を強化していきたいですね」
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