「石橋を叩きすぎ」な日本企業 “世界標準”に至るためのコンタクトセンターDXの要点(2/2 ページ)
Genesys(ジェネシス)日本法人の伊藤ポール・リッチー社長に、人員不足、カスハラといったコンタクトセンターの課題を解決し、日本企業が世界標準へと至るためのシナリオを聞いた。
「石橋を叩きすぎ」な日本企業 今後問われるのは?
――グローバルのトレンドと比べて日本企業の状況は、いかがですか?
日本の企業では、まだまだコンタクトセンターの最初の入り口にIVRを設けている企業が多く、直接オペレーターとの会話を望まれているお客さまが、長く待たされているケースが少なくありません。
一方グローバルでは、AIを活用したコンタクトセンター業務が既に実現されています。先日、私が米国のレストランで予約をしようと電話した際のエピソードですが、最初からオペレーターが対応してくれて、あれこれとやり取りをしていました。ところが、何度か会話を続けていると「何だかおかしい」と感じるようになって……。
そこで難しい質問を投げると「詳しい担当者に代わります」と言われました。変わった担当者が電話に出た時点で、前の担当者は生身の人ではなく、AIだということが分かりました。
――なるほど。多くの日本企業は今、どんなレベルなのでしょう?
このような生成AIやエージェンティックAI活用におけるカスタマーサービスを、われわれは5段階で定義しています。当社は、技術的には(AIエージェントによる体験を構築できる)「レベル4」の段階にあります。先の米国レストランの事例に近い状況ですね。さらなる自動化や効率化を進め、自動車でいうところの「完全なる自動運転」であるレベル5の実現に向けて、今まさに技術開発を続けています。
一方、多くの日本企業では、(事前に設定したロジックやワークフローの範囲内で文章や応答を作成する)レベル3の状態にとどまっています。技術的にはレベル4を実現できるのに、です。そのような背景もあり、イラストを公表することで、日本企業が「自社が今どこのレベルにいるのか」を、グローバルとの比較も含め、把握してもらえればと考えています。
監視員としての「ヒト」 AI完結の先にある「HX」の価値
――日本企業がレベル4を実装しない理由は、なぜなのでしょうか??
以前ほどではありませんが「石橋を叩いて渡る」と考える経営者や、そういう文化が根付いてしまっている企業が多いからでしょう。一方、グローバルの状況を把握している経営者や企業は、レベル4への刷新を推進しています。
これからは、コンタクトセンターを「単なるコストセンター」と捉えるのでは不十分です。経営に必要な、具体的にはデータの利活用はもちろん、CXやEXの先にある、感情や人間らしさを重視したHX(人間的経験)を向上させる必要があります。
HXを実現した先には、業績の向上もついてきます。企業の評判や価値も上昇するでしょう。特に日本企業は周囲からの評判を重視する傾向が強いですから、今後ますますこのような動きは加速すると考えています。
実際、特に金融業界、保険会社やカード会社ではこの動きが顕著になっています。ここ1〜2年の間に多くの問い合わせや、実際のサービスデザインに取り組む事例が増えていますね。
――レベル5の世界が実現すると、これは多くのAIの未来の文脈でも指摘されることですが、人はいらなくなるのでしょうか?
「AIでもできる業務」は代替されていきますから、オペレーターの業務の内容が変わってくると思います。例えば、難しいお客さまの問題を解決したり、人と同様にAIによるバーチャルエージェントを管理したりする業務には人間が必要です。ですから全く人がいらなくなる世界が来るとは考えていません。
例えば、スーパーの無人レジが参考になりますね。無人レジの導入によって、レジ打ちをする人自体は減りました。ですが、それぞれのお客さまが問題なく精算できているでしょうか。トラブルがあった際、すぐに熟練のメンバーがかけつけてサポートする。このような体勢に変化していますよね。
コンタクトセンターもこのような状況になっていくと思っています。そう遠くはない、近未来の話だと捉えています。
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