「転勤に最大100万円」それでもなぜ解決しない? 企業が制度を見直す理由(2/5 ページ)
転勤一時金の拡充が進む中、大手企業でも「金額だけでは社員の納得感は得られない」という課題が浮上。サントリーHDや東京海上日動の制度改革を通じ、柔軟な転勤制度の必要性を探る。
サントリーの狙い
サントリーHDは2025年1月から、転居を伴う転勤に対して、50万円の一時金を支給している。役職や家族構成、異動理由を問わず、転勤のたびに受け取れる仕組みで、同社によると、あくまで「インセンティブ」だという。
転居に伴う支度金や引越し費用は別途支給し、一時金は新しい土地でポジティブにチャレンジしてもらうためのものだ。人財戦略部の倉本龍一氏は「コスト的な概念はなく、『がんばってほしい』という趣旨」と説明する。加えて、単身赴任者には帰省交通費を月3回(年36回)まで会社負担とするなど、転勤支援を拡充している。
制度導入の背景には「10年3仕事」のローテーション方針がある。入社から10年目までに2回の異動を経験し、部門をまたいだ職務経験を推進する。多事業を展開する同社にとって、多様な経験をした人材を抱えることが競争優位性につながるという考えだ。
一方で、転居を伴う異動を避けたい社員の意向にも寄り添う。「エリア限定制度」を2025年4月に導入し、年1回の面談で申請して勤務地を絞れる働き方も用意した。給与・賞与に一定の影響は生じるものの、「キャリアオーナーシップ(自身のキャリアを自ら築く)」という考えに基づいて運用している。
「社員の価値観を大切にしつつ、会社が大切にしたい価値観も維持できる制度設計を目指した」と同部の佐藤恆士朗氏は語る。
制度全体の検討には、労働組合との協議を含め約2年を費やした。一時金だけを切り取れば、他社にも類似の制度はあるが、ローテーションの加速とエリア限定制度の新設を同時に進めた点に、同社の制度設計の特徴があるといえる。
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