「転勤に最大100万円」それでもなぜ解決しない? 企業が制度を見直す理由(4/5 ページ)
転勤一時金の拡充が進む中、大手企業でも「金額だけでは社員の納得感は得られない」という課題が浮上。サントリーHDや東京海上日動の制度改革を通じ、柔軟な転勤制度の必要性を探る。
「転勤がない」ことが強みになる?
サントリーHDは制度導入から約1年が経過し、従業員意識調査のスコアは上昇傾向にあるほか、もともと低水準の自己都合退職率も維持している。一方、配偶者のキャリアや介護といった個別事情にどこまで寄り添うか、ローテーション方針とのバランスは引き続き課題となりそうだ。
2026年4月に、新制度の導入を控える東京海上日動では、採用活動の段階で「首都圏、地域ともに反応はよい」との感触を得ている。ただし、勤務地の希望が東京に集中すると、地域拠点の運営が難しくなるリスクもある。そのため、地域での採用を強化するとともに、地方拠点のやりがいあるポジションの魅力を社内に伝え、社員の応募を促す方針だ。
しかし、こうした制度改革は、資金力のある大企業だからこそ実現できる側面が大きい。では、中小企業にとってこの潮流はどう映るのか。
東京商工リサーチの調査(2025年)によると、転勤や配置転換の実績がある大企業は75.6%に上る一方、中小企業は32.3%にとどまる。柔軟な転勤制度の導入率にも大企業(31.1%)と中小企業(12.6%)で開きがある。
大手が制度の柔軟性を競い合うことで、採用市場全体の期待水準が上がっていく懸念はあるが、中小企業が同じ土俵で張り合うのは現実的ではない。むしろ、見方を変えれば、「転勤がない」ことが強みとなる。
アプリ開発を手掛けるペンマーク(東京都目黒区)が、現役大学生611人を対象に実施した調査では、70.5%が就職先選びで「転勤の有無」を重視すると回答し、42.3%が「転勤がある企業への応募を避けた」経験があると答えた。転勤がないこと自体が魅力になることを示唆している。
大手企業の制度拡充がニュースになる中で、「転勤なし」を採用ブランドとして発信できるかどうか。金銭で勝負するのではなく、働き方の構造そのものを武器に変える発想の転換が求められる。
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