火葬炉の中に入って分かった、火葬場経営を苦しめる「見えないコスト」の正体:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
東京都内で6つの斎場(火葬場)を運営する東京博善。その「火葬炉の中」に入って分かった、経営に最も打撃を与えている「見えないコスト」の正体とは――。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
人がしゃがんでやっと入れる高さの横穴の中で、作業着姿の男性が壁の耐火レンガを交換している。手際よく傷んだ箇所を木槌(きづち)で壊し、新品のレンガにモルタルを塗っていた男性が、白いレンガを手に取って言う。
「入口にはこの熱に強い頑丈なレンガを使います。こちらのほうが耐久性が高いので」
男性の肩越しに、長さ1メートル弱の黒い筒状のバーナーが見えた。あそこから噴き出す炎によって、この横穴の内部は1200度にも達する。そして火葬師たちの熟練の技術によって、きれいにご遺骨が残るような形で荼毘(だび)に付されていく――。
筆者がどこにいるかというと、火葬炉の内部である。東京都内で6つの斎場(火葬場)を運営する東京博善の「施設部工事課」に属する職人たちがおよそ3カ月に一度のペースで実施する「炉内メンテナンス作業」を今回、特別な許可を得て取材させてもらっているのだ。
火葬炉によってダメージが異なるが、1基の修復作業は1日がかりだという。東京博善は6つの斎場で計64基の火葬炉を保有しているため、全てのメンテナンスを完了するにはかなりの労力が必要だ。しかも「全て手作業」という難しさもある。
レンガはただ積めばいいというものではなく、炉内の傷み具合を見ながら調整していく必要がある。そのさじ加減はマニュアルで身に付くものではないため、現場で熟練工の背中から学んでいくしかない。取材中も、火葬炉の外で3人の作業員が“親方”の手さばきを真剣なまなざしで見つめていた。
そんな「職人の技術継承」の現場に、黄信号が灯っている。
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