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火葬炉の中に入って分かった、火葬場経営を苦しめる「見えないコスト」の正体:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
東京都内で6つの斎場(火葬場)を運営する東京博善。その「火葬炉の中」に入って分かった、経営に最も打撃を与えている「見えないコスト」の正体とは――。
新人がパニックになる仕事
背の高い人、長く病気をされて痩せ細った人、太って体格のいい人、さらに小さな子どもや胎児など、遺体の状態は一つとして同じものがない。そのため火葬職人は内部を確認する小窓から遺体の状況を目視しながら、火力や酸素を調整しなければ、きれいな遺骨にはならない。
バーナーの火力で遺骨の形が崩れると「デレッキ」という長くて重い鉄製の棒で整えるのだが、これもかなりの技術が必要だ。初心者の場合、力任せに回すので腱鞘炎になってしまうことが多いという。
「常に想定外の事態が起きるのでマニュアルは通用しません。中でも新人がパニックになるのはやはり傷んだご遺体ですね」(斎場責任者)
葬儀業者から事前に情報共有されているので心の準備はできていても、腐敗が進行している遺体の場合、火を入れると急に体液が飛び出すことがある。炉の裏では強烈なにおいが漂うので、そこで新人は頭が真っ白になってパニックになるというのだ。そこに、さらに追い打ちをかけるのが「警報」だ。
「普通のご遺体に比べて尋常じゃないほど炎が上がってしまうので、炉内の酸素が足りなくなってしまって警報が鳴るんですね。そうなると新人は慌てますので、周囲にいる先輩が空気の取り入れ口などを開けて酸素を入れたり、火力を調整したりして落ち着かせるんです」(斎場責任者)
このような形で周囲から育成されることで、およそ半年から1年かけて1人前の火葬職人になっていくという。
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