一時は世界シェア7割も経営破綻 「ルンバ」はなぜ中国勢に負け、買収されてしまったのか(3/3 ページ)
ロボット掃除機の代名詞として大ブームとなった「ルンバ」。しかし近年は経営破綻の上、中国企業の参加で出直しを図るなど大きな逆風に直面している。
「価格」だけではなかった中国勢の強み
中国勢は価格優位性だけでなく、性能面でもルンバに差を付けた。
ルンバの空間認識は小型カメラを用いて行う。各地点で撮影した画像を基に、壁や物体からの距離など位置を推定する仕組みだ。より精度の高いものとしてレーザーで認識する方式があるものの、高価であるためアイロボットは採用しなかった。
一方で中国勢が採用したのはレーザー方式(LiDAR)である。照射したレーザーによる反射光を検出して距離を推定する仕組みであり、自動運転車にも使われている。特に暗い場所ではレーザー方式を搭載する中国勢の方が安定して作動するとされている。
高価だったLiDARも2010年代後半から低価格化が進み、量産化によって搭載コストのハードルが大きく下がった。アイロボットは遅れて2025年発売モデルでLiDARを搭載したが、モップの自動乾燥などその他の機能でも中国勢が先行している。
消費者が空間認識能力の違いを知った上で中国勢を選んだとは考えにくいが、少なくとも実力があるという理由でも中国勢は選ばれた。信頼性があり、低価格であるならば消費者は安い方を選ぶはずである。
中国企業の参加で出直し図る
過去、2022年にAmazonがアイロボットを約2300億円で買収すると発表したが、Amazonが他社製品を不利に扱う可能性があるという理由から米欧の当局が買収を認めず、アイロボットは再建に失敗した。この1月には、ルンバの製造受託企業で債権者の中国企業「杉川机器人有限公司(ピセア)」グループが同社の子会社化を完了している。ピセアグループはシャオミ、ハイアール、フィリップスなどの製品を生産するOEMメーカーである。
テレビやエアコンなど従来の家電と同様、欧米が開発した製品のシェアが既存技術の活用や組み立てを得意とする中国勢に奪われた形だ。今後はルンバの製造コスト削減や中国販売の強化が予想される。先進国でのブランド力も大きいため、中国企業傘下で「ルンバ」の名称は残るだろう。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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