売れないのは小説か、届け方か 時代に逆行した小学館の文芸誌『GOAT』、累計42万部の衝撃(3/4 ページ)
紙が売れない時代に、小学館の文芸誌『GOAT』は累計発行部数42万部を記録した。誕生のきっかけや価格設定、販売戦略などをGOAT編集長の三橋薫さんに取材した。
ピンクと青で構成された分厚い断面に引き寄せられた読者たち
2024年11月27日、GOAT1号が発売された。特集は「愛」で、キャラクターであるヤギのGOATくんのかわいらしいイラストが表紙を飾った。500ページを超える冊子の断面はピンクと青に分かれている。この配色には、視覚的なナビゲーションの意味合いもある。特集テーマである「愛」にまつわる作品にはピンクの色紙を、特集以外の作品にはブルーの色紙を使用しているのだ。これも沼本さんのアイデアだ。
文芸のデザインらしからぬ風貌のGOAT1号は書店に高く平積みされ、ぜいたくに色紙を使った分厚い冊子に思わず目を奪われる不思議な存在感があった。発売初日の反響を知りたいと思い、書店で様子をうかがっていた三橋さんは、来店客が次々にGOATを手に取る光景を目にした。
「断面の美しさに引き寄せられてGOATを手に取り、価格を確認してレジに持っていく若い方を何人も見かけました。担当する本がこんなに手に取られているのを見たのは初めてのことで、すごいことになりそうだと手ごたえを感じました」
初日から完売する書店が出るほど評判になり、初版の1万部はあっという間に売り切れ、入手困難になるほどだった。その後増刷を重ねて、GOATは半年に一度の季刊誌となった。現在は3号まで発刊されており、累計部数は42万部超(2月18日時点)という異例のヒットとなった。GOATを購入しているのはどんな人たちなのだろうか。
「購買層の7割が女性で、20〜30代の若い方が中心です。小説だけが好きなのではなく、映画や演劇、ファッションなどのカルチャー全般に関心が高く、トレンドに敏感な方が多い傾向です。ファッション誌を買いに来た女性が、『表紙がかわいいから』とついでに買うようなケースも多いです」
これまで文芸誌を買ったことがなく、読書から離れている層に届けるという三橋さんたちの狙いは見事に当たった。510円という価格設定も功を奏した。タイパやコスパの意識が高く、失敗したくないと考える若者たちの心理にはまったのだ。
さらに、GOATは普段書店に行かない若い層にもリーチできた。その理由は、執筆者を作家に限定せず、普段は小説を書かない著名人やアーティストにも執筆を依頼したからだ。
「SNSでは『文芸誌ってよく分からないけど、買ってみた』という投稿も見かけました。手に取るハードルを極限まで下げる、という私たちの思いが届いたとうれしくなりました」
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