廃線の時代に、なぜ延伸? ローカル鉄道が150億円投じる「異例の挑戦」(3/4 ページ)
赤字に苦しみ、配線を余儀なくされるローカル線が多い中、茨城県の「ひたちなか海浜鉄道」は延伸計画を進めている。なぜなのか?
通勤客、買い物客の需要も見込む
この流れを後押ししたのが、InstagramなどSNSでの“映える”スポットとしての盛り上がりだ。ひたち海浜公園のネモフィラやコキアは2018年頃から人気を集め、来園者数もこの時期を境に大きく増加していった。
もっとも、観光需要は季節や曜日、天候による変動が激しい。鉄道はピーク時の大量輸送には適している一方で、閑散期には駅や車両、人員といった設備が余剰となりやすいという課題もある。
そこで着目されたのが、工業地帯への通勤輸送だ。これであれば、年間を通じて安定した需要を見込むことができる。
湊線が延伸される地域は、茨城港常陸那珂港区として港湾法上の重要港湾に指定されている。もともとは旧陸軍から米軍へと引き継がれた広大な用地が返還され、1989年に起工された開発地域「ひたちなか地区」として整備が進められてきた。ひたち海浜公園の整備・開園も、その一環である。開発総面積は1182ヘクタールに及び、東京都千代田区を上回る規模を持つ。
現在、公園周辺では大規模な工業団地や商業地の開発が進んでおり、一部はすでに稼働している。新駅1(仮称)の近くには常陸那珂工業団地が立地し、現在も拡張工事が続く。さらに新駅2(仮称)周辺には、倉庫型商業施設のコストコや大型家電量販店などが出店しているほか、周辺には広大な未利用地も残されている。
湊線の延伸は、こうした企業への通勤需要や商業施設への来訪需要の取り込みも視野に入れる。加えて、阿字ヶ浦駅西側では区画整理事業が進められており、住宅地としての発展も期待される。ひたちなか市としては、市内への人口定着と市内企業への通勤利用の増加、その双方を通じて、地域経済の発展に湊線を生かす考えだ。
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