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廃線の時代に、なぜ延伸? ローカル鉄道が150億円投じる「異例の挑戦」(4/4 ページ)

赤字に苦しみ、配線を余儀なくされるローカル線が多い中、茨城県の「ひたちなか海浜鉄道」は延伸計画を進めている。なぜなのか?

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延伸計画に必要な事業費は行政からの支援

 鉄道の建設には莫大な費用がかかる。湊線の延伸区間は単線ながら高架構造が想定されており、年間営業収益が約2億5000万円(2014年度)の小規模鉄道会社が単独で負担できる規模ではない。実際、第1工区(1.4キロ)の事業費は、工事施行認可の段階で59.23億円と見積もられている。当然ながら、事業の実現には行政による資金支援が不可欠となる。

 その前提として、ひたちなか市とひたちなか海浜鉄道は2025年12月22日、「鉄道事業再構築実施計画」の認定を国土交通省から受けた。これは2007年施行の地域交通法に基づき策定される、地域交通の維持・改善に向けた枠組みである。


新駅1の建設予定地付近。周囲には未利用地も多い

 この計画では、延伸区間を含む湊線全線について、ひたちなか市と茨城県が鉄道施設の更新・維持・修繕費に加え、延伸など利便性向上のための投資を担う。一方で、ひたちなか海浜鉄道は運行と営業に専念する体制となる。賃貸店舗における「所有者と入居者」の関係に近い座組みといえばイメージしやすいだろう。

 さらに、この認定により、国の補助制度である社会資本整備総合交付金を活用できる点も大きい。

 支援対象となる事業費は、新駅2(仮称)までの延伸や阿字ヶ浦駅の列車交換設備整備、キャッシュレス対応の自動券売機導入などに約126.5億円。加えて、レールや分岐器といった老朽設備の更新に約21.8億円が見込まれている。総額は150億円近くに達する規模だ。

 この約150億円の投資は、単なる鉄道維持のための支出ではない。交通課題の解消や住民の利便性向上にとどまらず、産業振興や人口定着、さらには税収増といった波及効果まで見据えた「地域への先行投資」と位置付けられている。


新駅2建設予定地付近。奥に翼のゲートが見える

 こうした考え方は、鉄道業界にとどまらず、他の業界にも示唆を与える。ひたちなか海浜鉄道の戦略は、観光需要に依存するのではなく、通勤や商業施設への来訪といった複数の需要を組み合わせている点に特徴がある。変動の大きい需要と安定需要を組み合わせ、事業全体の持続性を高める発想は、多くのビジネスに通じるものだ。

 ローカル線の延伸という一見特殊な取り組みは、単体の採算ではなく、周辺価値を含めて全体で収益を生み出すという発想に支えられている。人口減少と市場成熟が進む中で、こうした「全体で稼ぐ」戦略こそが、今後の成長の鍵となるのかもしれない。

著者紹介:土屋武之(つちや・たけゆき)

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1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道ライター。鉄道系WEB雑誌『T's Express』編集長。幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌『鉄道ジャーナル』のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。主な著書は『鉄路の行間』(幻戯書房)、『新きっぷのルール ハンドブック』(実業之日本社)など。


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