再就職支援会社への「丸投げ」でいいのか シニア社員を送り出す人事が「すべき仕事」(3/3 ページ)
早期退職者を募集する企業が増えている。シニア退職者のその後の支援について、人事担当者はどこまで気をまわしているか。退職後の実態を解説する。
不満の声は人事部にも届き始めている
近年は、再就職支援会社を経て、当社に相談に来るシニア人材も少なくない。加えて、最近はシニア人材だけでなく、人事担当者からの相談も増えている。その背景には、実際に早期退職をして、再就職支援会社のサービスを利用したシニアOBからの声がある。
彼らが人事担当者に対して、「再就職支援会社は何の役にも立たなかった」「いくら払ったんだ」と不満をぶつけてきているという。
人事担当者としても、過去に関係があった上司や社員が苦労しているのを聞けば「他にサービスはないのか」と考え始める。ただ、再就職支援会社として信頼できるプレイヤーが少なく、代替手段が見つからないのが現状だ。
送り出すだけではダメ。人事担当者が意識すべきこととは
人事担当者に問いたいのは、退職した後の社員のことを本当に把握しているのか、ということだ。
30〜40年と身を粉にして働いてくれた人たちだ。家族を犠牲にして地方に単身赴任した人もいる。その人たちを早期退職で送り出した後、どこに就職したのか、給料がどれだけ下がったのか、そもそも再就職できたのか。実態を十分に把握できている企業はほとんどない。
再就職支援会社は毎月、企業の担当者に進捗(しんちょく)報告をしているが、内容は実のあるものとは言い難い。特に、就職先や年収について、個人情報を理由に報告を希望しない退職者が多く、実態の把握が難しいことが理由として挙げられる。企業側も、すでに退職した人の個人情報を扱いたがらないという事情がある。
結果として、送り出した後の実態は見えないままだ。再就職支援のノウハウも社内に蓄積されず、毎回同じことを繰り返すだけになっている。
構造的に把握しづらい問題であることは理解できる。だからこそ人事部が意識的に向き合わなければ、何も変わらない。世話になった先輩をそのように送り出している人事担当者自身も、いつか会社の外に出る日が来る。
人と人とのつながりは、会社を離れた後も続くものだ。だからこそ、送り出す側にいる今のうちに、形骸化した支援の再検討や独立支援など、他の対策やその企業のこれまでの資産を活用した独自の取り組みも検討すべきだろう。
例えば、電通は2020年に退職者の新たな挑戦を支援する仕組みとして、新会社「ニューホライズンコレクティブ(NH社)」を設立した。希望者は退職後に個人事業主となり、NH社と業務委託契約を結ぶことで一定の収入を得ながら、新規事業や別分野への挑戦が可能となる。スキルや志向に応じた仕事・学び・仲間の機会も提供し、「安心」と「チャレンジ」を両立する仕組みを整えている。
再就職支援は、外注して終わりではない。送り出した後にこそ、人事の仕事がある。
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