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東南アジアは「AI市場」の次なる中心地になれるのか? データセンター建設を阻む“熱”(1/2 ページ)

東南アジアでAIインフラの整備が加速している。だが、その成長を支えるデータセンターは、電力と冷却という現実的な制約から逃れられない。需要が急拡大する中で供給不足が続く同地域では、高温多湿という気候条件が大きな影響を及ぼしている。

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 東南アジアではAIブームを支えるインフラ構築が急速に進んでいるが、高温多湿の気候がその拡張を一層難しくしている可能性がある。米ASEANビジネス評議会(U.S.-ASEAN Business Council)によると、同地域のデータセンター需要は、米国や中国といった成熟市場に比べて供給が最大70%不足しており、2028年まで毎年20%の成長が見込まれている。

 現在、同地域にはデータセンターが370カ所存在し、その大半はシンガポール、インドネシア、マレーシアに集中している。シンガポールに本社を置くBDx Data Centers(BDxデータセンターズ)のCEO、マヤンク・シュリヴァスタヴァ氏はFortune誌に対し「この次の波に乗らなければ、デジタル分野で他国に支配される恐れがあると、エコシステム全体が認識している。経済的利益は原材料を完成品に変換する国に流れる。そしてこの場合、原材料とはデータである」と語った。

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データセンターが高温な環境に対応できるようになれば、東南アジアはAI市場として大きく成長する可能性がある(提供:フォーチュン)

「熱」と「湿度」がAIインフラを揺るがす

 しかし、東南アジア特有の蒸し暑い熱帯気候は、データセンターにとって大きな課題となる。データセンターはサーバーを稼働させ続けるために冷却が不可欠であり、涼しい地域に比べてより多くのエネルギーを必要とする。

 同地域の年間気温は華氏80〜95度(約27〜35℃)の範囲にある一方で、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE:American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)によれば、データセンターは理想的には華氏64〜81度(約18〜27℃)で維持することが望ましいとされる。

 シンガポール国立大学(NUS:National University of Singapore)で熱システムを専門とするリー・ポー・セン教授は「熱帯地域における課題は単なる高温ではなく、高温と湿度の組み合わせにある」と説明する。

 「高い外気温は熱の放出を難しくし、高湿度は露点制御を複雑にし、結露や腐食のリスクを高め、長期的な信頼性を低下させる」(セン氏)

 この状況はデータセンター運営者にとって難しい判断を迫る。熱帯地域には多くの人口が集中しており、データセンターは高速アクセスを確保するために利用者の近くに設置する必要があるからだ。シュリヴァスタヴァ氏は「世界人口の85%が温帯地域の外に住んでいるという事実は無視できない」と述べる。

 3月11日、BDxはシンガポールの「熱帯データセンター標準」(Tropical Data Center Standard)を初めて導入した。この指針は、運用温度を段階的に26℃(華氏78.8度)まで引き上げることを目指すものだ。

 この標準は2025年8月に発表されたもので、シンガポールが掲げる「グリーンデータセンターロードマップ」(Green Data Center roadmap)の中核となっている。同国の情報通信メディア開発庁(IMDA:Infocomm Media Development Authority)によれば、運用温度を1℃上げるごとに最大5%のエネルギー削減が可能であるという。シュリヴァスタヴァ氏は「データセンターの運用指標を変更することで関係者の合意を得るには、大規模な調整が必要だった。これは飛行中の航空機のエンジンを調整するようなものであり、極めて慎重に進める必要があった」と語る。

制約だらけでも「勝ち筋」がある市場

 データセンター企業の経営者は、東南アジアがグローバルなAIエコシステムにおける重要な空白を埋める存在になると見ている。特に米国では、老朽化した電力インフラや新規プロジェクトに対する政治的な反対や規制が障壁となっている。

 シンガポールに本社を置くBridge Data CentresのCEO、エリック・ファン氏はFortune誌に対し「米国は依然として世界最大のデータセンター市場だが、州ごとに電力網整備に関する規制が異なるなど多くの制約に直面している。その結果、多くのプロジェクトが遅延しており、このギャップをどこで埋めるかがグローバルな課題となっている」と指摘する。

 マレーシアは、増大するデータセンター需要に対応するため、2030年までに最大8ギガワットのガス火力発電を追加する計画である。一方シンガポールは、今後5年間で10億シンガポールドル(約7億8400万米ドル)以上を公共のAI研究に投資する方針を示している。

 また、米Amazon、米Microsoft、米Google、中国のAlibabaやTencentといった巨大テック企業も同地域に進出し、ハイパースケールデータセンターに数十億ドル規模の投資をしている。

 NUSのリー教授は「東南アジアには依然として建設余地がある。人口規模、光ファイバー接続性、北アジアと南アジアという大規模デジタル市場の中間に位置する地理的特性から、テック企業にとって展開先として魅力的な地域になっている」と述べる。

 BDxデータセンターズは2019年に設立され、現在はシンガポール、香港、台湾、中国本土、インドネシアの5つの市場で事業を展開している。同社最大の拠点はインドネシアで、西ジャワにある500メガワット規模のキャンパスを含む6つのデータセンターを運営している。

 同じくシンガポールで2017年に設立したBridge Data Centresは、現在インド、マレーシア、タイでデータセンターを運営している。同社はボストンに本社を置くBain Capital(ベインキャピタル)の支援を受けており、データセンター企業Chindata(チンダータ)を中国主導のコンソーシアムに40億ドルで売却した実績がある。

Copyright © Thomson Reuters

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