2→40店舗に拡大 「大阪の家具店」だったリビングハウスは、どうやって値下げ競争から脱却したのか(2/2 ページ)
100人中100人に好かれなくていい――。そう語る北村甲介社長の下で、リビングハウスは価格競争に陥りやすい家具・インテリア業界で成長を続けている。なぜ同社は“選ばれるブランド”になれたのか。その戦略に迫る。
「品のある混沌」が生む顧客体験
主要ブランドである「LIVING HOUSE.」は、ららぽーとやイオンなどの商業施設内にも多数出店している。
家具やインテリアは単価が高く、何度も買い替えるものではない。偶然、店舗で見かけたから即購入となるケースは少なく、消費者の「複数ブランドを見比べて検討したい」というニーズも高い。商業施設では消費者がその場で比較して意思決定できるよう、同じフロアに家具・インテリア店舗を集約するケースも多い。
同業他社の店舗が並ぶ中で選ばれるために、同社ではどのような工夫をしているのか。北村社長は店舗作りのテーマとして「品のある混沌」を掲げていると話す。
「買い物とはエンタメだと思っています。私たちは買い物を通して楽しさやワクワク感を提供したい。なので、店舗作りにおいてはお客さまに“宝探し”のような感覚を味わってもらえるように、あえてごちゃごちゃ感を演出しています。単純にごちゃごちゃしているだけでなく、その中に品格を生み出すために、バランスには気を配っています」
「LIVING HOUSE.」では同社オリジナル商品のほか、独占契約を結ぶドイツのブランド「KARE」(カレ)やイタリアの高価格帯ブランド「edra」(エドラ)などのアイテムも販売している。海外ブランドには、デザイン性が高く個性的な商品も多い。これらのブランドの商品を組み合わせて配置することで、良い意味で統一感のない空間を作っている。
日本人の多くは、住空間に色を取り入れることを恐れ、無難なモノトーンなどでまとめがちだという。しかし、同社はあえて「ファッションのように色や個性を混ぜ合わせる」ことを提案する。
「落ち着いたトーンのアイテムを求める人は多いです。しかし、私たちは100人中100人に好かれる必要なんてないと考えています。もっと言えば、アンチがいるぐらいでこそ、ブランドだと思います。100人に合わせていたら結局普通の店になってしまう。それでは、生き残れません」
また、接客でも差別化を図っている。
家具は服のように「試着」することができない。だからこそ、リビングハウスでは接客中に店内の家具を実際に動かし、組み合わせを実演する。顧客の目の前で理想の空間を具体化する、ライブ感のある接客が体験価値の一つとなっている。
原価を見ずに価格を決める独自の戦略
リビングハウスは価格戦略にも特徴がある。商品の価格は「原価+利益」で決めるのが一般的だ。しかし、同社では異なるアプローチを取る。それが独自の「値付け会」だ。
オリジナル商品や独占契約を結んでいるブランドの商品は、同社に値付けの権利がある。それらの商品について、北村社長と複数の担当者が集まり、まずは原価を見ない状態で「この商品はいくらで販売すると顧客は“値ごろだ”と感じるか」をそれぞれ提示する。その価格を基に議論した上で原価を確認し、最終的に価格を決定する。
「お客さまにとって原価なんて関係ない。大切なのは、そのプロダクトの価値に対して『値ごろ感』があるかどうかです。『値付けは経営』と言えるほど、非常に重要なものです。なので、一般的な方法よりも手間は掛かりますが、このプロセスを踏んでいます」
そのため同社が扱う商品は、一定の品質水準を保ちながらも利益率には幅があるという。これにより、顧客にとっての「価値と価格のバランス」を保っているのだ。
現在、リビングハウスは全国に約40店舗を展開するまでに成長し、独占契約している海外ブランドの単独店舗出店も実現した。急速な拡大の裏で、北村社長は「攻めと守りのバランス」を意識しているという。
「40店舗を超え、組織体制の見直しや人材育成といったメンテナンスが必要な時期に来ています。一度出店スピードを緩め、既存ブランドの質を徹底的に高める『足場固め』に注力しています」
同社が掲げるミッションは「日本を空間時間価値先進国へ」。欧米に比べ、家で過ごす時間の価値が低く見積もられがちな日本において、家具やインテリアを通じて人々の生活を豊かにすることを目指す。その実現に向け、同社は次の成長ステージへと踏み出している。
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