生成AI利用率を3→7割にアップ 日清食品が全管理職に伝えた「3つの心得」
安藤CEOの直感から、日清食品HDの生成AI活用はスタートした。しかし、現場では生成AIの利用率が約3割からなかなか上がらないという課題に直面。生成AIの活用率を大幅に引き上げた手法とは?
本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が4月8〜10日に開催した「Japan DX Week」内で実施されたセミナー「対談なぜ企業はデータを活かせない? 日清食品HDが実践するAI×データドリブン経営とは」の内容を要約したもの。
なぜ、AIが自社の課題を言い当てられるのか──日清食品ホールディングス(以下、日清食品HD)の安藤宏基CEOがGPT-4に触った際の率直な声だ。日清食品グループが今後向き合うべき課題を問うたところ、7つ提示された回答結果が、安藤CEO自身の認識とほぼ一致していたという。
間違いや掘り下げが不十分な回答もあったが、安藤CEOは「生成AIは間違いなく世の中を変えていく。積極的に使っていくべきだ」と確信。同社は生成AI活用に踏み切った。
ところが、安藤CEOの直感とは裏腹に、現場では生成AIの利用率が約3割からなかなか上がらないという課題に直面した。プロモーションやコミュニティ作りなどの施策を打っても、利用率が伸びない状況が1年続いた。そうした中、同社は管理職の役割に着目し、利用率を6〜7割に引き上げることに成功した。生成AIの活用率を大幅に引き上げた手法とは?
AI時代に必要な管理職の3つの心得
「『生成AIを使っていくべきだ』と判断したその日のうちにプロジェクトを立ち上げた」
同社執行役員CIOの成田敏博氏は、生成AI導入を決めた当時のスピード感について、こう振り返る。
その後、1人の開発者が2週間で社内専用の生成AIツール「NISSIN AI-chat」を構築。「きっちり作り込むよりも、まずはやってみることが先に進む道だった」(成田氏)。2023年4月から利用をスタートした。
ところが、リリースから1年間の利用率は3割程度と、横ばいが続いた。プロモーションやコミュニティ作りなどの施策を打っても、数字は思うように伸びない。期待に反して利用率が伸び悩む中、同社が重視したのが管理職の役割だった。
成田氏は「AI活用が進むかどうかは、管理職の姿勢が大きく左右する」と話す。「以前はAIがなくても仕事ができた」と考える年長者や、リスクを恐れて二の足を踏む上司がいるチームでは、若手が力を発揮できないとの考えからだ。
そこで同社は、全管理職を対象とした「AI活用リーダーシッププログラム」を実施。AI時代の管理職の心得を3つ示した。
(1)自分自身がAIを使うことにも増して、メンバーにAI活用を促すことこそ、マネジメントとしてはるかに重要
(2)AIのアウトプットに対して責任をもって人間が最終的に判断し、クリエイティブなアウトプットにつなげることにフォーカスすべき
(3)AI利用に長けたメンバーを「AIリーダー」として見いだし、AIについて教えを請い、現場でのAI活用を牽引(けんいん)してもらうべき
成田氏は「管理職自身がAIに精通している必要はない。しかし、メンバーに活用を促し、若手のAIリーダーをバックアップすることはマネジメントの義務である。それをしないのは、マネジメントスキルの欠落と言わざるを得ない」と力説する。
こうした強いメッセージが、生成AI活用に対する社内の空気を「個人の活用」から「チームとしての当たり前」へと変えていった。利用率は2025年に入ってから6〜7割に届くようになった。
後編では、AI活用に欠かせないデータ基盤やAIエージェントに対する考え方を掘り下げる。
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