「年間120万時間削減」 丸紅の生成AI活用が成果を出せる「4つの理由」(3/3 ページ)
総合商社・丸紅がDXに取り組む理由は「事業を成長させるため」と、とてもシンプルだ。情報、物流、食料、金属、エネルギーなど事業領域は多岐にわたる同社がDXで成果を出せる理由を語る。
2000個のAIエージェントを生む「普及」の仕組み
Marubeni Chatbotの特徴は、現場社員が自らAIエージェントを現場に即した形で作って運用できる市民開発型のプラットフォームになっている点だ。
現在、社内では2000を超えるAIエージェントが稼働しているが、その多くは現場社員自身が作成したものだという。
普及を担う丸紅バリュークリエーションオフィス所属の伊延観司氏によれば、当初はAIエージェントの作成には一定のリテラシーが必要だった。そこで同社はツールの機能を簡便化し、専門知識がなくとも直感的にエージェントを作成できるようUXの改修を重ねていった。
同時に、社員の習熟度に応じた教育施策にも力を注ぐ。
生成AIの受け入れに慎重な層に対しては、生成AIの基礎や注意点を学ぶ講習会を月1回以上の高頻度で開催。一方、活用に積極的な層に対しては、活用コンテストやアワードを実施し、優れた事例を社内広報誌で発信するなどしている。
特に重視するのが、個別の成功事例を「型化」して全社へ横展開することだ。例えば、ある部署からの「紙の請求書をExcelに転記するのが大変」という声に対し、OCRを活用した自動化ツールを開発。その部署に閉じずに、これを全社で使える汎用ツールとして公開することで、国内外の同じ課題を抱える拠点へと広げていく──といった具合だ。
開発力、普及力、現場力がDX推進のカギ
伊延氏は、丸紅のDXを支えているのは「開発力」「普及力」「現場力」の3つの要素の組み合わせだと説明する。
DEが担う「開発力」と、バリュークリエーションオフィスが主導する「普及力」。そして、何よりも自分の事業を良くしたいと願う社員の「現場力」。この3つが相互に影響し合うことで、成長のサイクルが生まれている。
同社は2026年4月、これまでの「デジタル・イノベーション部」という組織名を、前述の「バリュークリエーションオフィス」へと改称した。事業成長を目的とする部分は変わらないが、そのために必要な手段はDXやデジタルに限らず、成長につながるのであればより幅広いミッションも引き受けていく、という強い決意が込められているという。
「事業成長の手段をデジタルに限定しない」と宣言する同社の姿勢は、DXのその先にある企業の在り方を示唆しているといえそうだ。
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