「車掌がいない電車」が増加 “人手不足の時代”を進む鉄道の現在地(2/4 ページ)
運転士1人で鉄道を動かす「ワンマン運転」が広がっている。山手線でも2030年をめどに、移行の方針が示されている。なぜか。人手不足の時代の鉄道の現状を解説する。
かつては「経費削減」が主目的だったが……
現在、ワンマン運転の拡大を後押ししている最大の要因は、少子高齢化に伴う人手不足である。かつては経費削減が主目的だったが、前章で見たように大都市圏にまで導入が広がる背景には、社会構造そのものの変化がある。
今後、就業人口の減少は避けられない。一方で鉄道は、多くの人手を必要とする産業だ。例えば山手線では、平日の午前8時台に内回り・外回りを合わせて35本の列車が運行されており、単純計算で70人の乗務員を要する。ここにワンマン運転を導入すれば、同等の輸送力をより少ない人員で維持できる。
同様の動きは駅運営にも及んでいる。首都圏では無人駅の拡大が進んでいるが、これも人手不足への対応だ。限られた人員を運転士へと振り向け、必要数を確保しなければ、減便や路線維持そのものに影響が及びかねない。実際、路線バス業界では運転士不足により減便や廃止が相次いでおり、鉄道でも同様の事態が起きないとは言い切れない。
一方で、ワンマン運転には高いハードルもある。最大の課題は安全確保だ。確認を担う人員が減ることで、運転士の負担は増す。そのため、ホーム監視カメラや車両側面の確認カメラなど、機械による補完が不可欠となる。
こうした考え方の基盤にあるのが、「マン=マシンシステム」である。人と機械がそれぞれの特性を生かし、相互に補完しながら安全を担保するという発想だ。例えば、運転士が信号を見落とした場合でも、ATS(自動列車停止装置)が警告を発し、必要に応じて自動的に列車を停止させる。ワンマン運転は、この仕組みをさらに発展させたものと位置付けられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「赤字ローカル線」と呼ぶのはやめよ 廃止すべきという人が見落としている論点
JR東日本はローカル線の赤字額が約790億円に上ると発表した。だからと言って簡単に廃線にできるわけではない。どのような問題が絡んでいるのか。
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
東京チカラめしの会社、今は「水産」で稼ぐ 売上の半分を占めるまでに成長、なぜ?
大量出店と大量閉店で有名となった「東京チカラめし」、コロナ禍で水産業に参入し、現在は売り上げの半分を占めるまで規模を拡大させました。どのような変遷があったのでしょうか?
66.6億円の大赤字から4年で最高益へ 「ぴあ」は何を変えたのか?
コロナ禍の2022年度に「66億円」もの赤字を計上した、ぴあだったが、そこから逆転し、4年で最高益を記録する。同社のV字回復の要因を解説する。
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?

