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タクシー運転手が月収100万円? “勝ち組”報道の裏にある3つの不安スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

手取り100万円のプレーヤーが登場するなど、高収入化が話題となっているタクシー運転手。今後タクシー運転手になれば安泰かというと、そうではなく……。

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日本人が幸せになる道は

 さて、このような厳しい近未来のシナリオを聞くと、中にはこんな感想を抱く人もいるかもしれない。

 「せっかくタクシードライバーが少なくなって稼げるって話になったのに、外国人ドライバーを増やしたり、ライドシェアや完全自動タクシーを普及したりという余計なことをするから稼げなくなっちゃうじゃん」

 実は、そこに「賃金」の本質がある。われわれは業界の人手不足解消や、効率化、IT化を無条件に素晴らしいことだと思い込んでしまっているが、それが労働者にとっても素晴らしいことかというと、話は別なのだ。

 ブルーカラービリオネアという表現は大げさだとしても、一部のタクシードライバーの賃金が上がっているのは事実だ。その背景には少子化があり、ドライバーの数が減って深刻な人手不足になったことがある。

 欧米を筆頭に、東南アジアやお隣・韓国でも着々と賃金が上がっていく中で、日本の賃金はこの30年でほとんど上がっていなかった。そのように政府が企業に補助金をバラ撒(ま)いても、金融緩和をしてもピクリとも上向かなかった賃金が「人手不足」によって急激に上がっている。一部のタクシードライバーに限られた話ではあるが、これは「安いニッポン」にとって非常に示唆に富んでいる。

 日本では「人手不足」は「根絶しなくてはいけない悪」のように語られる。が、それはあくまでも人を雇う経営者の視点であって、現場で働いて賃金を得る労働者にとってはそれほど悪くない話なのだ。

 これから日本は、人口も市場規模も急速に縮んでいく。それは経済も同じで、右肩上がりの成長を目指すのは「極めて難しい話」になる。そういう中で、「成長を目指さずに、減少する日本人が幸せになる」道を模索することも必要だ。このような「経済停滞」を前提とした発想の転換を、「シュリンコノミクス(Shrinkonomics)」という。

 外国人ドライバーを増やし、ライドシェアや完全自動運転も普及していけば、「人手不足」は解消されるので企業はハッピーだ。外国人観光客が右肩上がりで増えていくので、企業の業績や株価も上がっていく。しかし、当のタクシードライバーの賃金は上がっていくかというと疑わしい。

 むしろ、過剰な供給が低賃金を定着させて、失職するドライバーも増えていくのではないか。この「縮みゆく国」では、ある程度の「人手不足」を放置したほうが、長い目で見れば日本人は幸せになるのではないのか――。

 その答えは今、ブルーカラービリオネアと持ち上げられる「タクシードライバー」の皆さんが、これからどんな道を歩むのかを見れば、分かるのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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