「残クレアルファード」はこうして広まった マイルドヤンキーとトヨタの“最適解”:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)
トヨタの高級ミニバン、アルファードが人気を維持している。当初から突出して人気だったのではなく、3代目モデルのインパクトのある顔つきでヒットした。さらに、残価設定クレジットによって地方の若者にも手が届くようになり、長期的な人気につながっている。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
トヨタのLサイズミニバン、アルファード/ヴェルファイアの人気に陰りが出ていると言われ始めた。
しかし、実際の売れ行きを見ると、2025年11月の乗用車の登録台数は、アルファードがフリードやステップワゴンを上回る6位で、ヴェルファイアは23位。両車種の合計台数は、8位のヴォクシーと9位のノアを足した数よりも少ないものの、1万台を超える。プリウスや日産ノートよりも売れているのである。
これだけの大型高級車で、この高い人気を約6年にわたって維持しているのだから、お化けモデルと言っていいほどの人気ぶりだ。その人気を支えているのは、主に法人の送迎用(ハイヤー利用も含む)と個人ユーザーだ。
アルファードの最新モデルでは、2024年にプラグインハイブリッドを追加し、環境性能をさらに高めた。しかし、個人ユーザーに人気なのはガソリンの上級グレードZ。ハイブリッドの最上級グレード、エグゼクティブラウンジも人気だが、法人需要が大きい(写真:トヨタ自動車)
しかし、法人向けで毎月何千台も需要があると思えないから、需要の大半が個人ユーザーであるというのが実情だろう。どうしてそれほど高い需要を維持できるのか。その理由は、トヨタが築き上げた独特のビジネスモデルにある。
といっても、トヨタはビジネスモデルもマルチパスウェイ(あらゆる選択肢を現実的に使い分ける戦略)だ。古くはカローラバン、現代ではプロボックスやハイエースなどの営業バンが法人営業や職人の需要を取り込み、クラウンやアルファード、レクサスLSなどは法人の重役や自治体首長の送迎用として需要がある。プリウスやアクア、ヤリスなどは広く法人・個人ユーザーに利用される。幅広いユーザー層に対応するカテゴリーを設定し、豊富なモデルを用意して、販売網を充実させてきた。
最近では、センチュリーSUVによって、従来は法人の重役向けだったセンチュリーセダンのイメージを刷新。センチュリーを独立した超高級ブランドとして展開していくことを明らかにしている。
しかし、アルファード/ヴェルファイアの販売台数や収益構造はセンチュリーとは全く異なり、その規模の大きさから見ても大成功といえる。
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