「残クレアルファード」はこうして広まった マイルドヤンキーとトヨタの“最適解”:高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)
トヨタの高級ミニバン、アルファードが人気を維持している。当初から突出して人気だったのではなく、3代目モデルのインパクトのある顔つきでヒットした。さらに、残価設定クレジットによって地方の若者にも手が届くようになり、長期的な人気につながっている。
試行錯誤を重ねてアルファード人気をつくり上げた
アルファードは登場当初から人気車だった――そう思われがちだ。だが実際は、Lサイズミニバンの先駆者である日産エルグランドに対抗するモデルとして2002年に登場したものの、発売当初の人気は限定的だった。
確かにハイエースにはない高級感や快適性は魅力的ではあったが、異形ヘッドランプとフロントグリルを組み合わせた上品な大型ミニバンであり、当時は薄いヘッドライトを二段に重ねてインパクトのある顔つきにした兄弟車ヴェルファイアの方が人気が高かった。
人気が爆発したのは、先代の3代目モデルが2015年に登場してからだ。プラットフォームを一新し、ボディ剛性を高めるとともにリアサスペンションをマルチリンク(トヨタはダブルウィッシュボーンと呼んでいる)化することで、大柄な車体ながらも乗り心地とハンドリング性能を大幅に向上させた。
しかし人気の要因は、そんな機能面や走りの改善ではない。高級かつインパクトのあるフロントマスク、風格を感じさせる“顔つき”こそがヒットの原動力なのである。
しかも、3代目も当初から爆発的なヒットとなったわけではない。従来モデルとそれほど変わらなかった売れ行きが変化したのは、登場から2、3年たってからだ。街で新型のアルファードを見かけるようになり、その迫力ある顔つきによって前走車や対向車のドライバーが購買意欲をそそられたのである。
そして残価設定クレジットという“打ち出の小づち”を使い、高い残価設定を実現することにより、アルファードは飛ぶように売れ始めたのである。
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