なぜ、ビジネスホテルは「寝る場所」→「癒しの空間」に進化した? “ビジホ飲み”人気急上昇の背景(6/6 ページ)
ビジネスホテルの用途が大きく変化し、「ビジホ飲み」の人気が急上昇している。そもそも、ビジネスホテルはどのように誕生し、どう進化してきたのか?
宿泊するための施設から、時間を楽しむための施設へ
このように変遷を遂げてきたビジネスホテルですが、最近では新しい使われ方が浸透しつつあり、人気に拍車がかかっています。それが、「ビジホ飲み」です。
例えば、大阪の難波エリアにある「ホテルリリーフなんば大国町」では、「ビジホ飲み」を積極的に打ち出しています。
同ホテルは公式SNSで「ビジネスホテルでの部屋飲みの楽しさ」を検証した投稿を公開。投稿された動画は、「ビジホ飲み最強説を検証」というテロップから始まり、部屋で酒を片手にテレビを見たり、YouTubeを楽しんだりする様子が紹介されています。さらに、事前に購入したアイスを食べ、眠くなったらそのまま客室のベッドで眠るという、気ままな過ごし方も描かれていました。
それに加え、夜はラウンジで無料のアルコールバーが利用できることもアピール。「ビジホ飲みでリフレッシュ」「身近な非日常」といったメッセージとともに、魅力を発信していました。
同ホテルはアイスクリーム無料、ドリンク無料、セルフ式アルコール飲み放題、焼き立てパン食べ放題と、充実した無料サービスをそろえています。さらに、全室バス・トイレ別。一人でビジホ飲みを満喫できる環境が整っています。コンビニで好きなつまみや弁当を買い込み、手頃なアルコールを追加で購入して冷蔵庫にキープし、夜通しビジホ飲みを楽しむといったシーンも想像できます。
進化を続けるビジネスホテル、今後は?
このように日本のビジネスホテルは、1980年代「安く泊まるための標準化された無機質な宿泊施設」→1990〜2000年代「全国どこでも安心して使えるホテル」→2010年代「大浴場、朝食、夜食、睡眠、サービスで差別化するホテル」と進化しました。
そして2020年代には、都心や地方での仕事や観光を支える貴重なインフラとなっています。すでにビジネスホテルは出張のための宿ではなく、街に滞在して、時間を楽しむための場所へと姿を変えつつあるのです。
ただ、今後は人件費、仕入れ原価、水道光熱費などのエネルギーコストの上昇に加えて、建設費の高騰、人材難も課題となりそうです。これらの影響で新規出店が難しくなると、低コストのオペレーションによって利益を出し、施設数を増やしてきたビジネスホテル業界も、想像を超える新たな業態へと進化していくでしょう。今後も出張でビジネスホテルを利用しながら、新たな可能性を探ってみたいと思います。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。
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