なぜ、後発の「すき家」が「吉野家」を抜いたのか? 牛丼×チーズという提案が生まれた背景:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
すき家を擁するゼンショーホールディングスで代表取締役会長を務めた小川賢太郎が4月6日に逝去した。ゼンショーはなぜ、1兆円企業となれたのか?
ゼンショーHDの強さは牛丼だけではない
ゼンショーHDの強さとして特筆すべきなのが、M&Aを通じた事業拡大の巧みさである。主力ブランド「すき家」を除けば、自社でゼロから育てた有力ブランドは、回転寿司のはま寿司やラーメンの伝丸などに限られ、多くのブランドは買収によってグループ入りしている。
その代表例が、ココスの再生だ。ゼンショーは2000年、茨城県を地盤とするスーパー「カスミ」からココス・ジャパンを80億円で取得した。
当時のゼンショーの年商は約170億円。一方、ココスは約330億円と、まさに小が大を飲み込んだ形だ。1999年の東証2部上場で株式市場から67億円を調達していたことが、この大型買収を可能にした。加えて当時、ファミレス業界全体が低迷し、業態そのものに陰りが見えていたため、買収価格が相対的に抑えられていたことも追い風となった。
小川氏は、ファミレス不振の原因を「各社が互いをまねし、個性を失っていること」にあると見ていた。ココスの社員に対しては、競合他社ばかりを見るのではなく、顧客と未来を見るよう鼓舞したという。そして、ファミレスは特別な日に行く店から、日常的に利用される店へ変化していると考え、商品、オペレーション、店舗運営を徹底的に見直した。その結果、約7億円だった経常利益を、1年半後には約20億円に伸ばしている。
ココス再生の成功によって、ゼンショーグループにはその後、多くのM&A案件が持ち込まれるようになった。こうしてグループは拡大を続け、やがて外食業界初の売上高1兆円企業へと成長していった。
M&Aの成功に加えて、ゼンショー躍進の土台となったのが、独自のビジネスモデル「マス・マーチャンダイジング・システム(MMD)」である。これは原材料の調達から、製造・加工、物流、店舗販売に至るまでを一貫して自社で企画・設計・運営する仕組みだ。このMMDによって中間流通コストを削減し、品質を保ちながら商品を手頃な価格で提供できる体制を築いた。
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