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なぜ、後発の「すき家」が「吉野家」を抜いたのか? 牛丼×チーズという提案が生まれた背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

すき家を擁するゼンショーホールディングスで代表取締役会長を務めた小川賢太郎が4月6日に逝去した。ゼンショーはなぜ、1兆円企業となれたのか?

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社会課題の解決にも力

 小川氏の思想は、単なる効率化や低価格戦略にとどまらない。ゼンショーHDは、食の事業を通じて世界的な社会課題の解決にも踏み込んだ。

 国際連合の統計によれば、世界の約80億人のうち、7億人近くが飢えに苦しんでいる。また、世界不平等研究所のレポートでは、世界の上位1%の富裕層が保有する総資産は、個人資産全体の約4割に達することが分かっている。上位0.1%の超富裕層だけでも約2割を占める一方、下位50%が持つ資産はわずか約2%にとどまる。

 ゼンショーHDは、こうした現実に対し、外食企業として独自の答えを示してきた。その一つがフェアトレード商品の展開である。グループ店舗ではフェアトレードのコーヒーなどを販売しており、すき家では1杯120円という手頃な価格で提供されている。国内外3000店舗以上の販売網を通じて商品を届けることで、途上国20カ国の生産者に正当な収入機会を生み出し、生活の質向上と経済的自立を後押ししている。


ゼンショーグループがフェアトレードで取引する、アフリカ・タンザニアの小規模コーヒー生産者(出所:ゼンショーHD公式Webサイト)

 この取り組みは、2007年の東ティモール産コーヒー豆の取り扱いから始まった。生産者団体と直接、あるいはNGOなどを通じて提携し、持続可能な有機農法や自然循環型農法の技術支援も行ってきた。

 現在では、有機JAS認証を取得したコーヒー豆を、東ティモールやメキシコなど16カ国から調達している。紅茶はスリランカやネパールなど4カ国から、ルイボスティーは南アフリカから調達している。

さらなる躍進を目指すには

 マルクスに学び、経営を科学として捉えた小川氏が築いたゼンショーHDは、高品質な商品を低価格で提供するMMDシステムと、世界の飢餓・貧困問題に具体的に向き合うフェアトレード推進という成果を上げた。

 一方で、「深夜・早朝営業のワンオペ」「強盗被害の多発」といった急成長企業ゆえの運営課題が見えた時期もあった。

 2代目社長を継いだ小川洋平氏により、店舗オペレーションにおける課題が解決されれば、ゼンショーは社名に込めた「全勝」「善商」「禅商」の全てを兼ね備えた完成形へ近づくだろう。外食世界一も、決して夢物語ではなさそうだ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。


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