ポイ活しない人は、やっぱり損なのか 8859億円「取りこぼしポイント」のカラクリ:「ポイント経済圏」定点観測(5/5 ページ)
物価高で広がるポイ活だが、「やらない人は損」とは言い切れない。NRI試算の8859億円「取りこぼしポイント」を読み解くと、そこには現金決済の現実、高還元の条件、労力に見合わず離脱する人々の姿が見えてくる。
「取りこぼし」を埋めたい人々
「取りこぼし」と名付けた瞬間、8859億円という数字は、お得を取り逃した側の落ち度のように聞こえる。だが、ここまで見たとおり、その数字は単なるカードの出し忘れというような単純なものではない。
NRIは2029年度のポイント発行額を、現在より約3割多い1兆7257億円と予測している。その成長要因として挙げているのは、公共交通や中小飲食店、医療機関へのキャッシュレス導入の進展に加えて、銀行・証券・給与の受け取りまで束ねた金融グループの囲い込みだ。
三井住友のOliveも三菱UFJのエムットも、消費者の支払いと金融取引を一つの経済圏に集めることで、キャッシュレス利用とポイント発行額を押し上げようとしている。
ただ、囲い込みが進むほど、ポイ活はもう「節約」ではなくなる。銀行口座、証券口座、給与振込先、投信積み立てを1社にそろえ、月の利用額を管理し、定期預金の満期を把握する。これは家計管理型のポイ活というより、資産運用の入口に近い。8859億円という「取りこぼし」を埋める出口は、節約術の改善ではなく、金融グループへの加入手続きのほうに置かれている。
ポイ活は今や、「もう一段、こちらに来てください」というメッセージに姿を変えている。そして「取りこぼし」を心配してくれる相手は、たいてい、こちらの口座番号をほしがっているのである。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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