「あんた、やるかい?」 看板商品のレシピなし、機械は老朽化……75年続く「喫茶店」の事業承継(3/4 ページ)
開業75年の喫茶店「モア松屋」、地域で長く親しまれてきたが、2020年のコロナ禍で営業継続が危ぶまれていた。そんな状況で、ひょんなことから地元の牛乳販売店が事業承継することに。どのように受け継がれ、地域に愛される店として進化を続けているのか。
アイスもなか、味の再現に苦戦
モア松屋のアイスもなかは、アイスクリームでもジェラートでもない、シャリシャリとした独特の食感が特徴だ。牛乳に砂糖を混ぜて作るシンプルなものだが、生クリームや卵を使わない分、牛乳と砂糖の配合に加え、加熱時間や温度といった条件が味を大きく左右する。まず必要だったのは、それらを明文化することだった。
長年、原料づくりを担当していたアルバイトはすでに退職していたことに加え、分量は全て経験と感覚に頼っていたため、正確な配合は誰にも分からなかった。
「牛乳や砂糖などの材料は分かっているのですが、何をどれくらい入れるのかが分からない。先代親子と一緒に、作って、食べて、調整して、を繰り返しました」
甘みや粘り気、口当たりなどの微妙な違いを確かめながら、試行錯誤を重ね、納得のいく味にたどり着いた。
レシピという課題を乗り越えた先で、別井さんが直面したのが設備の問題だ。
アイスもなかのアイスは、創業当時から使い続けている機械で作られている。この機械によって、アイスもなか特有の空気を含んだ「シャリシャリ」とした食感が生み出されていた。しかし、機械を設計・修理していた会社はすでに廃業しており、部品が壊れても同じ部品は手に入らない。過去には簡単な修理でも、完了までに2カ月かかったこともあったという。
「機械が止まれば、商品が出せなくなる状態でした」
安定供給を優先して機械を入れ替えれば、食感が変わり、特徴が失われる。しかし、現状維持では故障のリスクを抱え続けることになる。別井さんは、機械の構造を見直し、壊れやすい部分については仕様を変更した部品で代替することにした。
手元に改良資金があるわけではなかったため、羽生市が実施していた、地域産品づくりに取り組む事業者を支援する制度を活用し、クラウドファンディングに取り組んだ。2024年9〜12月の4カ月で、寄付目標額170万円に対し、554万2000円が集まった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
「聖地巡礼に来ました」 なぜ、セブン‐イレブン津田沼店に全国から日本酒好きが集まるのか
日本酒好きから「聖地」と呼ばれている「セブン‐イレブン」が千葉県にある。どんな店なのか?
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
大企業の早期退職募集の波が広がりを見せている。申し込みシニア社員も多いようだが、中小企業への転職は簡単ではない。構造的なギャップを解説する。
ローソンの車中泊は、単なる「場所貸し」ではない 見落とされがちな体験価値とは
ローソンが実施している「車中泊」サービス、これは単なる「空いている場所を貸す」というビジネスにはとどまらない価値がある。利用者はどのような「価値」を見いだしているのか。

