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EC化率「28%の英国」と「9.8%の日本」――約3倍差の正体は? 視察で見えた「本当の主役」 がっかりしないDX 小売業の新時代(2/5 ページ)

英国の小売EC化率は28%、一方日本の約9.8%──。この差を生む要因は?

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英国の食品EC=「自動倉庫」「集中センター型」という誤解

 英国EC化率28%という数字を語るとき、日本の小売関係者がまず想起するのはOcadoでしょう。CFC(Customer Fulfilment Centre)と呼ばれる完全自動倉庫から自社配送網で家庭に届ける、世界でも数少ないネット食品スーパー特化企業です。

 ところが、Ocadoの市場シェアは、イメージとは桁違いに小さいのです。

 Ocado Retailの英国食品市場シェアは約1.8%にすぎません(※)。シェアの絶対値は英Tescoとは比較になりません。直近では2%台に乗せていますが、それでも食品市場全体から見れば小規模です。

※参照:UK's Ocado Retail lifts revenue outlook after shopper numbers grow

 経営面の厳しさも鮮明です。Ocado Groupの2024年度売り上げは31.6億ポンド(約6800億円)まで伸びました。一方、調整税前損失は3.79億ポンド(約815億円)の赤字です。調整EBITDAは1.53億ポンド(約330億円)の黒字まで改善していますが、税前損益では赤字が続いています。

 株価もピーク比では9割超下落しています。かつては「小売テックの本命」として評価されましたが、足元では市場の期待値が大きく修正されています。

 海外展開にも揺り戻しが出ています。米最大手の食品スーパーKrogerは2025年にOcado技術を使った自動倉庫3拠点の閉鎖を決めました。

 3年前に本連載でKrogerが導入したOcadoのCFCがうまくいっていないのではないかと書きましたが、その通りの結果となってしまいました。

 Krogerは100億円以上の投資をして、自動化されたCFCを展開する大規模な食品小売業です。2018年にOcadoと提携し、現在7カ所にCFCを拡大しています。

 しかし、決算資料などで明確な成果については記述されていないのが現実です。当初、投資回収を4年で計画しているということでしたが、順調とは限らないのでしょう(参考:EC化率「45%の中国」と「13%の日本」 3倍超の差がつく納得の理由)。

 カナダのSobeysもカルガリー地区のCFC閉鎖を決定。2025年12月、Ocadoは大半の国際市場でパートナーとの相互独占契約が終了したと公表しました。

 Ocadoは、英国の小売業のEC化率を支える「主役」ではありません。「集中センター型食品宅配モデルでは、思ったほど簡単には勝てなかった事例」と言えます。

 日本の小売関係者がOcadoの自動倉庫に目を奪われている間、英国EC市場の本丸は別のところで動いていました。

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