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EC化率「28%の英国」と「9.8%の日本」――約3倍差の正体は? 視察で見えた「本当の主役」 がっかりしないDX 小売業の新時代(1/5 ページ)

英国の小売EC化率は28%、一方日本の約9.8%──。この差を生む要因は?

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連載:がっかりしないDX 小売業の新時代

デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。


 筆者は4月に英国の大手小売業幹部向け研修で壁打ち役をやる機会があり、合わせて国内88店舗を視察してきました。本連載「がっかりしないDX 小売業の新時代」では、これから数回にわたって英国の小売りを扱います。

 英国の小売EC化率は28%。日本の約9.8%と比較して、進んでいることが分かります。英国のEC事情を語る際には「自動倉庫」「集中センター型宅配」といったキーワードが挙がるケースが多く見られます。しかし現場に行くと、英国EC市場の本丸は別にあることが分かります。

著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)

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20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。

現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」シニアフェロー Nextリテール分科会リーダーなどを兼務する。

公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇

公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質2025DX


「英国28%」「日本9.8%」 圧倒的に違うEC化率の現在地

 英国国家統計局(ONS)の小売売上指数によれば、2025年の小売りの売り上げに占めるオンライン比率は27.5%でした。月次では2025年12月に29.5%まで上昇しています。つまり、年間は約28%、年末商戦期には3割近い水準にあると見てよいでしょう。

 一方、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によれば、2024年の日本の物販系BtoCのEC化率は9.78%にとどまります。統計定義は完全には一致しませんが、英国は日本のおよそ2.8倍の水準にあります。

 日本のEC化率があらゆる分野で低いわけではありません。業種を分解すれば、景色は変わります。

 「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(日本43.0%)や「生活雑貨・家具・インテリア」(日本32.6%)はすでに高水準です。アパレルに相当する「衣類・服装雑貨等」も日本のEC化率は23.4%であり、英国との差は決定的ではありません。書籍・映像・音楽ソフトに至っては日本が56.5%と高い水準です。

 ギャップが大きいのは、食品、化粧品、医薬品の3業種です。日本では「食品、飲料、酒類」のEC化率は4%台半ばにとどまります。一方、英国では食品オンライン比率がONSベースでおおむね10%前後で推移しており、英調査企業Kantarの2025年公表データでは、オンライン食品売り上げが食品市場の12.7%まで上昇した時期もあります。購買頻度も金額も大きな食品分野で日本の2〜2.8倍という差は、全体の数字に大きく影響を与えています。

 化粧品・ヘルスケア領域でもオンライン化は進んでいます。英市場調査企業Mintelによれば、イギリス成人の63%が美容・パーソナルケア商品をオンラインで購入しています。独調査会社ECDBの市場定義では、2025年の英Personal Care分野のオンライン売り上げ比率は45〜50%、Health Care分野は40〜45%に達しています。

 ただし、これは日本の分類と完全には一致しないため、方向感を示す参考値として見るべきです。

 日本側は、経済産業省の商品分類では「化粧品・医薬品」合算で8.57%。筆者の推定として、医薬品は5%未満、化粧品は10%台前半と考えます。

 つまり、日本との差が大きいのは、既にEC化が進んだ家電や書籍ではありません。食品、化粧品、医薬品という、店頭接点・配送網が絡む高頻度な購買領域なのです。

 英国でこの3業種のEC化率が高い理由は、大手小売業が店舗網を物流網に組み替えて、ECで購入した商品を自宅以外の場所で受け取るクリック&コレクト(Click & Collect)が標準サービスとして根付いたからです。

EC
イギリス最大手食品小売業TESCOのClick & Collectスペース(2026年4月筆者撮影)

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