EC化率「28%の英国」と「9.8%の日本」――約3倍差の正体は? 視察で見えた「本当の主役」: がっかりしないDX 小売業の新時代(5/5 ページ)
英国の小売EC化率は28%、一方日本の約9.8%──。この差を生む要因は?
Click & Collectは「届け方の選択肢」ではなく「来店動機」
英金融機関Barclaycardの調査では、Click & Collect利用客の85%が受取時に追加購入をしたと報告されています。Click & Collectは単なる「届け方」の選択肢ではなく、店舗の集客装置・客単価アップの装置として機能しているのです。
英国の食品EC化率が日本の2倍程度ある背景には、TescoやSainsbury'sの食品Click & Collectが「駐車場受け取り」「店舗受け取り」「ロッカー受け取り」まで含めて選べることがあります。受け取り体験そのものを店舗側が設計し、宅配の手間と再配達コストを顧客にも物流網にも回さない設計になっているのです。
重要なのは、Click & Collectを配送費削減策としてだけ見ないことです。Click & Collectは来店動機を創出します。オンライン注文をきっかけに顧客を店舗へ戻し、追加購買を生み、店舗在庫とEC在庫の距離を縮める仕組みです。英国小売は、この機能を標準装備にしました。
伸び悩む日本のEC化 求められる視点の転換
日本のEC化率が伸び悩んでいるのは、Amazonと相性が良い型番指名買いの業種が先行して伸びきってしまい、店舗を拠点としたオンライン化が有効な「食品・化粧品・医薬品」で店舗とECが別々に動いている影響が大きいと考えます。
再配達削減のための妥協策ではなく、EC化率を押し上げる積極策としてのClick & Collect。Ocadoという「派手なネット専業」の影に隠れた、この視点の転換が、日本のEC化率倍増に向けて必要になります。
次回はOcadoとの長期契約を断ち切った英John Lewis Partnershipの現在地を扱います。
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