「客の金庫から現金を窃盗」 前代未聞の事故が起きても、なぜ三菱UFJは「貸金庫業」を頑なに続けるのか(3/4 ページ)
顧客の貸金庫から十数億円を行員が盗むという大事件が起きた三菱UFJ銀行。今や時代に取り残されつつあるビジネスモデルということもあり、地銀では撤退が相次ぐ。しかし当の三菱UFJは、貸金庫業を今後も維持するという。いったいなぜなのか。
事件を受け「現金保管NG」になったが、実効性は不明
たとえ銀行や名だたる上場企業であっても、傍流事業における実質放置状態での権限移譲や相互けん制の欠如は不祥事につながりやすい傾向にあります。普段われわれがその存在を意識していない盲腸が、暴飲暴食などの不摂生から炎症を起こし盲腸炎になるかの如くです。
銀行の貸金庫業務はまさしく“盲腸的”な存在であり、三菱UFJやみずほで起きた事件は、実質的に相互けん制が働いていない管理放置状態にあったことが大きな原因であると言えるでしょう。
貸金庫事件を受け、当該銀行に限らず業界として是正やリスク回避に向けた動きを取っています。各銀行で、それまで緩かった貸金庫事務の管理体制および検査体制の再整備に着手しました。特に、犯行に使われてしまった現場保管の予備鍵に関して、各行とも取り急ぎ本部での集中保管としました。現場行員が勝手に扱うことができない状況に変更したのです。これは、再発防止に向けた大きな変更点と言えます。
銀行が業務効率化の観点から、現場行員、特に貸金庫に関わる役職者の行動を性善説に則ったルールの下で運用してきたやり方を、より厳しい管理体制に改めた形です。
銀行がこれまで貸金庫事務を性善説に則って運用してきたのは、付随業務かつ自行の資産や利益を大きく棄損(きそん)する懸念がないことが背景にあります。業務の脆弱(ぜいじゃく)性や顧客リスクを軽く見ていたともいえ、この点は銀行の基本姿勢として猛省が求められるところです。
貸金庫における現金の保管について、業界団体の全銀協は各行への指針となる「貸金庫規定ひな型」を改訂しました。今回のような事件の再発防止の観点に加えて、金融庁からのマネーロンダリング防止強化の要請もあったからです。
具体的には格納物として現金の保管を不可とすることを明示しています。ただし、実際に保管物を銀行が確認できるわけではないので、この改訂がどれほどのリスク低減効果につながるのかは定かではありません。
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