なぜ、ユニクロの売り場は「買いやすさ」と「補充しやすさ」を両立できるのか 強さを支える“思想”に迫る(5/5 ページ)
少々の割高感が話題になることもあるが、いまだ圧倒的な人気を誇るユニクロ。小売りに詳しい筆者が、その売り場から「強さ」の正体を分析する。
それぞれの施策が、巧みに絡み合っている
特に特徴的なのは「広告」「物流」「IT」が別々ではなく連動している点です。高精度な需要予測による生産の最適化、売り切ることを推進する広告と売場フォーマット、物流効率改善による在庫安定によって粗利を改善し、投資の好循環サイクルを維持する。その実現のためにAIやデータを駆使している構図です。
例えば、商品に装着されているRFIDタグも、単なるレジ高速化のために存在しているのではありません。棚卸し時間の短縮、欠品の検知、EC在庫の統合に役立っています。さらに、店舗での受け取り、自動発注精度の向上など、店舗現場を安定運営するために機能しています。
このように、ユニクロの強さは、単独の施策では説明できません。長く売れる定番商品、坪在庫を意識した売場、補充しやすい陳列、少人数運営、RFID、高粗利、継続投資、ブランド広告――全てがつながっています。だからユニクロは、売り場が崩れにくく、欠品しにくく、セール依存にも陥りにくいのです。
世の中に理念を掲げる企業は多くあります。しかし、その思想がここまで売り場へと落とし込まれている企業は、実はそれほど多くありません。ユニクロの店舗から感じるのは、徹底した顧客視点と、現場を重視する経営姿勢です。どの戦略を採用するか、判断に迷うことも多かったと推測されます。
しかしその各局面で顧客視点、現場視点を忘れないという普遍的な軸があると強く感じます。ファーストリテイリングが掲げる「情報製造小売業」という言葉は、単なるDX標語ではないことが、実際の店舗オペレーションを見るとよく分かります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ユニクロの「6990円」ジャケットは、どこまで通用する? 「初めての顧客訪問」「大事な契約」 専門家に聞いて分かった“意外な”事実
ユニクロが強化しているビジネスウェア。近年はラインアップも拡充しているようだが、実際のビジネスシーンではどこまで通用するのか。
「世界のユニクロ」も夢じゃない? 欧米で大苦戦してたのに、気付けば世界47位のブランド 大躍進を実現した戦略に迫る
2000年代に欧米に進出したものの、大苦戦していたユニクロ。それが今や世界的なブランドとして認識されるまでになっている。一時は海外店舗を大きく減らしたが、ここまで盛り返した理由は何なのか?
