自社で持つ顧客データが「ゼロ」だった永谷園 公式アプリで仕掛ける“指名買い”を生む戦略(2/2 ページ)
複数のロングセラーブランドを抱える永谷園が、同社初となる公式スマートフォンアプリの提供を開始した。背景にあったのは、「顧客データ保有ゼロ」とも言える状態への危機感だ。アプリ開発に踏み切った、老舗メーカーならではの課題とは。
「安いものを探すだけ」の買い物を変えられるか
永谷園アプリの狙いは、顧客データの取得だけではない。コミュニケーションデザイン部 部長代理の小川美朋さんは、現在の厳しい市場環境を踏まえ、このアプリに込めた本質的な思いを次のように話す。
「昨今の物価高により、消費者にとって週末の買い物が『安いものを事務的に探して買うだけの、楽しくない義務』になりつつあると感じています。このアプリが買い物と食卓にワクワク感を生み出し、少しでも日々の買い物の楽しさを思い出すツールになれればと思っています」(小川さん)
アプリの目的が顧客データの取得だけであれば、レシート投稿機能とランクプログラムだけでも成立する。ガチャ機能を加えた点に「買い物を楽しんでほしい」という思いが込められている。
また、商品の購入時だけでなく、アプリへのログイン時にもガチャ券を配布する背景には、アプリを習慣的に開くことで日常的に永谷園とつながり、結果的に数ある選択肢の中から「永谷園を選ぶ理由」につながることを期待しているという。
お茶づけや即席みそ汁のような日常的に購入される食品カテゴリーでは「その日、スーパーマーケットで割引されていた商品を購入する」など、指名買いする商品が決まっていないケースも多い。
「既存の永谷園ファンの方に、これまで以上に買い物を楽しんでいただくことに加え、特定ブランドへのこだわりがない層に『永谷園の商品を買おう』と思ってもらえるきっかけとして、アプリが貢献できればうれしいです」(小山さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
永谷園の「カップお茶づけ」が好調 開発担当者に聞く、“このタイミング”で発売したワケ
永谷園が9月に発売した「カップ入り お茶づけ海苔」が好調だ。「ありそうでなかった」という声も上がっている同商品だが、なぜ“このタイミング”で発売したのか。開発担当者に取材した。
ワークマンのアプリが「あえてデータを取らない」理由 「地に落ちた顧客満足度」を引き上げられるか
「地に落ちた顧客満足度の向上を目指す」──9月1日、ワークマンの土屋哲雄専務のコメントが注目を集めた。既存・新規顧客両方に課題を感じる中で、低下気味だった顧客満足度を引き上げるために、公式アプリの提供を開始した。この公式アプリにおいて、ワークマンは「顧客データの取得」や「ECへの送客」をKPIに置いていない。
モスの人気バーガーが「肉を減らしたのに、販売数180%に伸びた」ワケ “意外な顧客ニーズ”とは
モスバーガーが2025年11月から期間限定で販売した「アボカドバーガー」は、パティに使う肉の量を2024年時から4割減らした。販売食数と売り上げはいずれも伸長。同社がボリュームを抑える判断をした背景に迫る。