ランサムウェア攻撃の“お金事情” 侵入コストはたった6.6万円? 米初代サイバー長官が実態明かす
ランサムウェア攻撃者は、約6.6万円で企業に侵入できる――こんな調査を発表したHalcyon。戦略顧問を務める、米初代国家サイバー長官だったクリス・イングリス氏がランサムウェア攻撃の実態を明かした。
ランサムウェア被害の復旧には平均約2億3000万円かかり、業務が約21日間止まる――サイバーセキュリティ企業のHalcyon Japan(東京都渋谷区)は5月26日、こんな分析結果を含むレポート「日本を標的とするランサムウェア攻撃の実態 2026」を発表した。
ランサムウェアは、企業のデータを暗号化し、復旧と引き換えに金銭を要求する身代金型ウイルスだ。アサヒグループホールディングス、アスクル、KADOKAWAグループなど大手企業が被害を公表した。警察庁の発表によると、2025年の国内ランサムウェア被害は226件だが、これは氷山の一角だとみられる。
米国バイデン政権で初代国家サイバー長官を務めたクリス・イングリス氏は「ランサムウェア攻撃者が3500倍も有利で、コスト効率良く攻撃できる。攻撃に失敗しても損失は少ないが、企業が防御に失敗したときの代償は大きい」と指摘した。同氏は米Halcyonで戦略顧問を担っており、同日の記者会見に登壇した。
イングリス氏によると、ランサムウェア攻撃者が企業に侵入する際のコストはわずか約6万6000円だという。攻撃者はなぜ、これほど優位な位置に立てるのか。同氏が実態を明かした。
ランサムウェア攻撃の“お金事情” 侵入コストはたった6.6万円?
イングリス氏は「攻撃側と防御側の間に驚くほどの非対称性がある」と強調した。企業内ネットワークに侵入するためのツールや権限は、ダークウェブで約6万6000円で販売されているという。被害の復旧にかかる平均コストは約2億3000万円で、ここに「身代金」「業務停止時の機会損失」「風評被害」は含んでいない。
同氏によると、攻撃者は最短1時間で企業内ネットワークに侵入するという。侵入後に、300超の脆弱(ぜいじゃく)性を詰め込んだソフトウェアによる攻撃「BYOVD」(Bring Your Own Vulnerable Driver)を仕掛けて、サイバー攻撃の検知を担うツール「EDR」(Endpoint Detection and Response)などを無効化。「データの窃取」「システムの暗号化」に着手する。
企業側が侵入を検知するまでに平均6日かかるといい、その間に攻撃者は「システム深部への侵入」「高い権限を持つIDの窃取」などを終わらせる。イングリス氏は「用意周到に攻撃を仕掛けるため、侵入を一度許すとあらゆる場所が狙われる」と警鐘を鳴らした。
サイバー攻撃者が優位に立てる「2つの理由」
サイバー攻撃者が企業より優位に立てる理由は、2つあるとイングリス氏は説明した。
1つ目は、新技術の登場だ。生成AIなど新しい技術が登場すると、従来のIT運用では想定していなかった事態が起こり得る。攻撃者は、この変化を瞬時に察知して、新技術を取り入れたり対策の穴を突いたりする。
新しいセキュリティ対策機能が登場しても、企業の導入には時間がかかる。「どのような機能なのか」「自社システムに影響はないか」などを入念に確認してから導入するため、攻撃者との技術差が生じてしまう。
2つ目は、攻撃者が徒党を組んでいる点だ。攻撃に利用できる脆弱性や技術の情報を共有したり、脅威アクターが「リーダー」「ランサムウェア開発担当」「攻撃の実行犯」など得意分野に応じて分業する。
しかし企業は、連携をためらいがちだとイングリス氏は述べた。連携すると「A社の脆弱性情報をB社に共有する」「A社の独自情報を外部に伝える」などが必要になるケースがあり、慎重にならざるを得ないという。
「日本政府は果敢に対応」 実際の責任は民間企業の肩に
被害が拡大するランサムウェア攻撃を前に、各国が政府レベルで対策に乗り出している。
「日本政府は果敢に対策を講じており、その一つが『能動的サイバー防御法』だ。しかし、実際の『堅牢(けんろう)なシステムを構築する』『有事に備えて防御策を講じる』といった責任は民間企業の肩にかかっている」(イングリス氏)
能動的サイバー防御法は、2025年5月に可決された「サイバー対処能力強化法」「サイバー対処能力整備法」から成る。サイバー攻撃への対応能力を強化することを定めたものだが、主な対象は重要インフラに限られる。
ランサムウェア攻撃に対する各社の取り組みが重要だ。こうした状況を踏まえて、Halcyon Japanは「ランサムウェア対策ソリューション」を5月26日から国内で提供すると発表した。24時間365日のサポートを提供するほか、業界団体とも連携する計画だ。同社は、国内のランサムウェア対策を前進させられるか。
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