中身は他と本質的な差はない──60年超えのロングセラー「味ぽん」、コロナ禍の停滞を打破した「2本柱の戦略」(1/2 ページ)
一般的にプロダクトライフサイクルは30年と言われているが、味ぽんは1964年の発売から62年が経過した今も、Mizkan(愛知県半田市)を代表する主力ブランドの一つだ。時代の変化に合わせて生活者のインサイトを捉え、ブランドをチューニングすることで成長を続けてきた。
本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が4月22〜24日に開催した「マーケティングWeek」内で実施されたセミナー「日常に寄り添い、冒険を仕掛ける──ロングセラーブランド味ぽんの価値拡張戦略」の内容を要約したもの。
「すごく乱暴に言えば、中身そのものは他のポン酢と本質的な差はないかもしれない」──Mizkan Holdings執行役員の村重祐介氏は、味ぽんの中身(品質)について率直にこう述べる。
一般的にプロダクトライフサイクルは30年と言われているが、味ぽんは1964年の発売から62年が経過した今も、Mizkan(愛知県半田市)を代表する主力ブランドの一つだ。味ぽんは50回以上に及ぶサイレントリニューアルに加え、時代の変化に合わせて生活者のインサイトを捉え、ブランドをチューニングすることで成長を続けてきた。
これまでの味ぽんのチューニングは、大きく4つのフェーズに分けられる。
第1フェーズ(発売当初): 水炊きやしゃぶしゃぶが一般的ではなく、家庭に土鍋もなかった時代。味ぽんを売ることは、家庭で鍋をするという「行動」を一緒に売ることだった
第2フェーズ(1980年〜汎用訴求): 冬以外の時期に増えた「返品」を減らすため「ギョーザに味ぽん」「おろし焼肉に味ぽん」といった春夏の使用用途を提案した
第3フェーズ(1990年〜旬の食材・健康訴求): 「さんまに味ぽん」など旬の食材への訴求や、しょうゆの代わりに使用することで塩分を抑える「健康訴求」を展開した
第4フェーズ(2010年〜簡便用途): 女性の社会進出が進む中で「鶏のさっぱり煮」など、水と1対1で調理できる簡便性を提案した
しかし、コロナ禍以降、味ぽんの売り上げが停滞した。同社は味ぽんの第5フェーズとして捉える難局を、どのようにして乗り越えたのか。
「調理」に対する価値観が変化 味ぽん、2本柱の戦略
味ぽんの第5フェーズは、世の中の変化をどう捉え直すかという「環境認識」の刷新からスタートした。背景には、将来的な市場縮小に加え、調理に対する価値観の変化がある。
今は夫婦で家事を分担し、子どもが育った後は調理の負担を減らしていくという「調理定年」の考え方が広がっている。SNSでは冷凍食品を皿に移すことや、カップ麺に野菜を加えるだけでも立派な「調理」としてポジティブに受け止められている。
こうした空気感を踏まえながら、同社は約半年をかけて「UAV」(ユニーク・アトラクティブ・バリュー)、つまり「顧客のインサイト×自社の強み」を再定義した。そこで見えてきた生活者のインサイトは、次のようなものだ。
「おいしい料理を手軽につくりたい、でもマンネリしがち。ちょっとしたアレンジで、いつもの料理をちょっと新しく、楽しくできるといいのに」
こうした生活者の本音に対し、同社は味ぽんが持つ「クセがなく、何にでも合わせやすい」といったブランドの強みを掛け合わせた。ブランドの新たな価値規定を「味ぽんがあれば、手軽に、味の幅を無限に広げられる」と位置付け、
(1)使い道の幅を広げること
(2)ブランドへの愛着を高めること
の2本柱で、戦略を進めていくことになった。
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