株価30倍・時価総額3位のキオクシア、「スーパーサイクル」突入へ 成長戦略どう描く?
時価総額ランキング国内3位に躍り出たキオクシアHD。社長は「市場からの評価と信頼の表れだ」とする。さらなる成長戦略をどう描くのか。
半導体メモリ大手、キオクシアホールディングス(以下、キオクシアHD)の快進撃が止まらない。2024年12月の上場から株価がうなぎ上りを続け、30倍以上に躍進。時価総額ランキングで国内3位に浮上した。6月3日には時価総額が一時的に45兆円を超え、ソフトバンクグループに次ぐ第2位に付ける場面もあった。
「現在の株価は、AI需要を的確に捉えた当社の戦略に対する、資本市場からの評価と信頼の表れだ。(中略)AIデータセンター向け需要は力強く拡大しており、フラッシュメモリ市場は活況を呈している。この状況は2027年も継続する」――キオクシアHDの太田裕雄社長執行役員は、6月2日の投資家向けイベント「Investor Day」でこう語った。
同社の河村芳彦副社長執行役員(財務統括責任者)は「収益曲線が大きく変わった。2026年度から(利益拡大や成長が長期的に続く)スーパーサイクルに入っていく」という見解を示した。市場の期待を前に、同社はどのような成長戦略を描くのか。
キオクシア「スーパーサイクル」突入へ 成長戦略どう描く?
キオクシアHDは、東芝のメモリ事業を祖業とする。東芝時代に開発したデータ記録用の半導体「NAND型フラッシュメモリ」は、スマートフォンや自動車などさまざまな製品に採用されている。データを保存する「ストレージ」は、AIなどコンピュータの計算処理に欠かせないことから同社の追い風になっている。
キオクシアHDは、2026年度第1四半期(4〜6月)の売上収益を1兆7500億円、Non-GAAP純利益は前年同期比で約112%増となる8700億円を見込んでいる。
同社は、利益構造の変化を1枚のスライドで提示した。
2019〜2025年度通期の売上高がピンク色の棒グラフで示され、緩い右肩上がりになっている。青い棒グラフは2026年度通期売上高(同年度第1四半期の予想を4倍したもの)を示しており、河村副社長は「収益規模が格段に大きく上昇する」と述べた。
折れ線グラフはNon-GAAP営業利益を表しており、成長曲線が上方にシフトしている。折れ線の谷も小さくなっていることから、河村副社長はスーパーサイクルに入るという見方を示した。
太田社長「市場の要望に応えられる唯一の記録媒体」
キオクシアHDの成長を支えるのが、好調なAI、データセンター市場だ。2025年後半からAIのトレンドが変わり、AIモデルを構築する「学習」から、AI処理を実行する「推論」に移っているという。
それに合わせてAIエージェントやフィジカルAIなど、多段階の処理が必要な用途が広がっている。推論時に外部知識を参照する「RAG」(検索拡張生成)や、過去の推論結果を再利用する「KVキャッシュ」などの仕組みが多用される中、取り扱うべきデータ量が増大している。
「AI推論の処理量が爆発的に増加する。重要なのは『計算速度』『データ処理能力』『消費電力』を含めたTOC(総保有コスト)だ。膨大な推論処理をいかに経済的かつ効率的に実行するかが鍵になる(中略)。(低消費電力・高速・大容量の)フラッシュメモリこそが、市場の要望に応え、推論システムを経済的に拡大させられる唯一の記録媒体だ」(太田社長)
このストレージ需要を取り込むため、同社は事業ポートフォリオの変更を計画している。データセンター事業とエンタープライズ事業に注力し、両事業の売り上げ比率を全体の60%以上に高める考えだ。
3年間で設備投資1.4兆円、研究開発費6900億円を計画
急成長によって得られた資金は、成長投資に充てる。2026〜2028年まで年間約4700億円を設備投資に回して、供給体制を強化する計画だ。研究開発には年間約2300億円を投じて、AIの進化に応えられる次世代メモリ技術や、内蔵したフラッシュメモリを用いてデータを読み書きする記憶装置のSSD製品を開発する。
同社は現在、AI需要に対して複数の製品を提供している。高いデータ転送性能(帯域)を求める場合は高帯域SSD「KIOXIA CMシリーズ」を、低遅延性を重視する場合は高性能SSD「KIOXIA GPシリーズ」を、データ基盤としての役割には大容量SSD「KIOXIA LCシリーズ」を展開している。
これらの製品で活用しているのが、キオクシアのコア技術である3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」だ。平面構造のフラッシュメモリを積層に重ねることで、大容量を実現。現在は「第8世代 BiCS FLASH」を用いた製品を出荷しており、第9世代と第10世代の市場投入や開発を急ぐ構えだ。
中国メーカーに対して「当社が勝てる」
パートナー企業との連携も強化する。AIシステムにおいてメモリやストレージがボトルネックになっている中、米NVIDIAと手を組んで課題解決に乗り出している。SSDに保存したデータにGPU(画像処理半導体)が直接アクセスする技術「NVIDIA Storage-Next」などを開発中だ。
一方で、競合企業といわれる中国メーカーについて、太田社長は「勝てる」という見解を述べた。
「中国メーカーは、コンシューマー市場を中心にしている。今後データセンター市場に参入する可能性はあるが、地政学的な背景から中国国内に縛られるだろう。中国のデータセンター市場はそれほど大きくないため、しばらくは当社が勝てる」(太田社長)
太田社長は「AIインフラの根底を支え、次の技術的パラダイムシフトをけん引する企業として、市場の要求に確実に応え、企業価値の向上を目指す」と力を込めた。同社は市場の期待を超える成長を続けられるか。
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