もはや「カードの会社」ではない──「金利のある世界」で、クレディセゾンが選んだ戦い方 水野社長に聞く(2/3 ページ)
「金利のある世界」で、預金を持たず市場から資金を調達するノンバンクはどう戦っていくのか。クレディセゾンの水野克己社長は「一長一短」と前置きしつつ、金利の復活を機会だと捉える。
金利上昇が生む「空白地帯」を攻める
攻めの取り組みは、銀行が引いた後の空白にある。
金利上昇を、水野社長はこう見る。「一長一短だと思っています。調達コストは上がるが、ファイナンスは金利連動型なので、金利が上がれば収入も付いてくる。チャンスかなと思うところも、結構あるんです」
低金利の時代、銀行は利ざや(貸出金利と調達金利の差額)で稼ぎにくかった。だが金利が戻れば本業で稼げる。
「(銀行は)金利で稼げるなら、無理にリスクを取りに行くより、安定した収益を得よう、となる。そのため、金融ニーズに空白みたいなものが生まれ、銀行が取りづらいところが出てくる」
国際的な自己資本規制であるバーゼル規制では、リスクの高い資産を抱えるほど、銀行は多くの自己資本を積まねばならない。リスクを外に出したい――銀行の動きは、金利が戻るほど強まる。
この空白を、グループぐるみで取りにいく。「当社も不動産関連のファイナンスをやっているし、その下のレイヤーに、リスクの高い顧客へ融資するセゾンファンデックスという子会社もある。フルラインアップで、お客さまのお金のニーズに応えられる」
銀行が返済能力で審査するのに対し、ノンバンクは担保価値で判断するため、銀行が貸せない相手にも貸すことができる。「セゾンファンデックスが他社と違うのはスピード感。審査結果の報告が圧倒的に早い。すぐにお金が欲しい顧客に応える。ここで手数料を稼ぐ」
実際、2026年3月期のファイナンス事業の事業利益は約470億円。カードを軸とするペイメント事業の約330億円を上回り(※)、グループ最大の利益源だ。利益の主役は、すでにカードではない。
※同社は2026年度より「エンタテインメント事業」を廃止し「ペイメント事業」への集約を予定している。330億円は旧ペイメント事業と旧エンタテインメント事業を合算した数字で、ペイメント事業単体の事業利益は「約306億円」となった
リスクを取れば、焦げ付きも増える。先回りで強化するのが回収力だ。「2つの債権回収会社を連携し、より深く、よりリスクのあるところまで与信できるようにする。そこを取らないと、うちは勝てない」。潮目が変わったいま、問われるのは、その空白へ誰よりも早く踏み込めるかだ。
自由とスピードという武器――銀行傘下ではないこと
「スピード」という強みについて水野社長はこう語る。
「ノンバンクの強みは、自由度ですね。銀行法で縛られていると、ガバナンスの部分や、5%ルールなど、いろいろある。規制としてはやっぱり重い。われわれは、経営は自由であるべきだという発想でやっています」
「5%ルール」は、銀行が一般事業会社の議決権を原則5%までしか持てない規制だ。銀行法のもと金融庁の重い規制を受ける銀行に比べ、ノンバンクの制約は軽く、新規事業や提携に動きやすい。
「東南アジアの配車サービス大手Grab(シンガポール)とジョイントベンチャーを立ち上げた時も、うちは1カ月で決めたんですよ。向こうがびっくりしていました」
大企業が同じ規模の海外出資を決めるには、通常もっと時間がかかる。「意思決定の速さでいえば、われわれは上場企業の中でもかなり早いほうだと思います」と水野社長は言う。
その象徴が、スルガ銀行との資本業務提携だ。提携ローンで実績を積んでいる。「スルガ銀行のお客さまには富裕層が多い。相互に送客しながら進めています」
ただ、これを調達難の切り札――「銀行の預金を自社の調達に生かす一手」と見るのは早い。「ゆくゆくはそういうところも視野に入れますが、足元はまだそこまでいっていない。スルガ銀行自体も預貸率が7割程度で、すごく潤沢に預金が余っているというわけでもないので」と水野社長は慎重だ。
自由とスピードで空白を取る。その先に、同社は何を見ているのか。
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