現場が”疲弊しないDX” Webだけで年間141件の車検依頼が来るガソリンスタンドの戦略(3/5 ページ)
「どれだけ売り上げを作っても、数字が穴から抜け落ちていくようだった」。そんな危機感から、金澤石油は店頭営業頼みの集客を見直し、自社サイトを軸とした仕組みづくりへとかじを切った。地域のガソリンスタンドが実践した“難しくないDX”とは。
事業領域ごとに変えた導線設計
今回の取り組みでは「車検」「板金塗装」「中古車査定・買取」の3つのサービスについて、デジタル上に集客導線を構築した。
谷崎氏は「全て自動車関連サービスですが、お客さまの依頼先の探し方や心理状態は大きく異なります。それぞれでお客さまが抱えるであろう不安や意思決定プロセスを踏まえて、訴求内容と導線を整えました」と話す。
同氏によると、「車検=比較検討型」「板金塗装=突発的な相談型」「中古車査定・買取=不安の大きい意思決定型」に整理できるという。それぞれの特性を踏まえ、どのような導線を設計したのか。
車検:期限のある比較検討型
車検は有効期限が決まっており、誰もが定期的に受けなければならない。一方で、依頼先をあらかじめ決めている人は多くなく、「千葉市 車検」「車検 安い」「近くの車検」などと検索しながら比較検討するケースが多い。
谷崎氏によると、こうしたユーザーは価格だけでなく、「オプションは本当に必要な整備なのか」「後から追加費用が発生しないか」といった疑問も抱えているという。
そこで金澤石油は2025年4月に、Webサイト「カナザワあんしん車検」を公開。価格を訴求するのではなく、認証工場(一定の規模の作業場と作業機械、特定整備に従事する従業員を有する工場)であることや、国家資格を持つ整備士が対応すること、料金や整備内容を分かりやすく説明することなど、安心して依頼できる理由を記載した。また、スマートフォンから見積もり予約ができる導線も整備した。
結果、Googleの検索順位は「千葉市 車検」では3位、「千葉市緑区 車検」では2位を獲得。サイト経由での流入数は約1年で141件、収益は約465万円に上った。新規顧客比率は98%となり、これまで接点のなかった地域ユーザーへの認知拡大に成功した。
谷崎氏は「地域で安心して任せられる車検先を探している顧客との接点を作れたことが大きかった」と振り返る。
板金塗装:突発的な相談型
板金塗装は、日常的に検討するサービスではない。「車をぶつけた」「傷が付いた」「へこみが気になる」――そうしたタイミングで初めて情報収集を始めるケースが多い。加えて、相場も分かりにくく、保険を使うべきか自費で修理するべきかを判断しづらいため、「どこに相談すればいいのか分からない」と迷うユーザーも少なくないという。
そこで金澤石油は「まず相談できること」を重視した。2025年12月に公開した、Webサイト「カナザワあんしん板金」では、細かな料金表を提示するのではなく、傷の状態によって費用が変動することを前提に、LINE公式アカウントによるチャット相談や来店見積もりへの導線を整備した。施工事例や顧客の声を掲載し、「この程度の傷でも相談してよいのか」というためらいを解消することを意識したという。
その結果、2026年4〜5月の2カ月間で15件の案件を獲得し、収益は147万円を超えた。
中古車査定・買取:不安の大きい意思決定型
車検や板金塗装と比べても、心理的ハードルが高いのが中古車査定・買取だ。「安く買い叩かれないか」「しつこく営業されないか」「査定額の理由が分からない」など、特に初めて車を売る人にとっては判断材料が少なく、不安も大きい。一括査定サイトを利用することで「複数社から一斉に電話が来ること」に抵抗を感じる人も少なくないという。
「車を売るという行為は、お客さまにとって大きな意思決定です。だからこそ、単に高く買い取るという訴求だけではなく、『納得して売却できる』『安心して任せられる』という体験を作ることを意識しました」(谷崎氏)
2026年5月に公開したWebサイト「カナザワあんしんクルマ買取」では、「地域の会社に安心して相談できること」を打ち出した。24時間365日の予約受付や査定理由の丁寧な説明、無理な勧誘をしないことを伝えることで、女性や初めて査定を依頼する人でも相談しやすい環境づくりを進めた。サイト公開から1カ月だが、商談2件、成約1件と成果が出始めている。
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