現場が”疲弊しないDX” Webだけで年間141件の車検依頼が来るガソリンスタンドの戦略(4/5 ページ)
「どれだけ売り上げを作っても、数字が穴から抜け落ちていくようだった」。そんな危機感から、金澤石油は店頭営業頼みの集客を見直し、自社サイトを軸とした仕組みづくりへとかじを切った。地域のガソリンスタンドが実践した“難しくないDX”とは。
現場で「デジタル化」は受け入れられた?
それまでの現場はアナログな対応が中心だったが、デジタル化は受け入れられたのか。金澤氏は「業務負担が大きく増えたという感覚はありません」と話す。
増えたのは、サイト経由の問い合わせや予約通知メールを確認し、必要に応じて返信することくらいだという。もともと車検や整備の予約は店舗側で管理していたため、Web予約が入っても大きな運用変更は必要なかった。
むしろ運用では楽になった面もあるという。「これまではスタッフが店頭で声をかけたり電話でフォローしたりして予約につなげていましたが、サイトを見たお客さまが自分のタイミングで予約してくれるようになりました。現場は『予約を取りにいく』から『予約に対応する』形に変わりました」(金澤氏)
ただ、デジタル化に向けて全く不安がなかったわけではない。かつて車検比較サイトを利用していた際には、価格や特典を基準に車検先を選ぶ顧客への対応に苦労した。その経験から、現場には「Webから来る客は大変なのではないか」という印象が残っていたからだ。
しかし、自社サイト経由の来店客は、会社の考え方やサービス内容、スタッフの雰囲気を理解したうえで予約しているケースが多かった。価格だけで比較するのではなく、金澤金澤石油に対して安心感を持って来店する顧客が増えたことで、現場が抱いていた不安も自然と薄れていった。
新規顧客をリピーターにつなげる取り組みも進めている。現場では、見積もりから入庫、納車までできる限り同じフロントスタッフが対応をする。女性客には女性スタッフなど、初めて利用する顧客の不安を減らす工夫を重ねている。
さらに、来店後には感想や意見を尋ねるメールを配信し、集まった声を店舗内で共有してサービス改善に活用している。また、作業完了から10日を目安に「その後、お車の調子はいかがでしょうか」と連絡を入れるなど、納車後のフォローも欠かさない。
こうした取り組みの結果、客層にも変化が生まれた。以前は50〜60代がメイン顧客だったが、Web経由で20〜40代や女性の利用者が増加。既存顧客からも「Webサイトを見たよ」「車検もやっているんだね」といった声が寄せられ、店頭での引き合いも増えたという。
「車検については年間141台、収益が約465万円という成果も大きいですが、それ以上に、新しい客層との接点が生まれ、会社の可能性が広がったことが一番の実感として大きいです」(金澤氏)
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