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伊勢丹は「顧客」、阪急は「店舗」 決算で見えた、百貨店2強の戦い方(2/3 ページ)

国内の百貨店業界を代表する2強の「伊勢丹新宿本店」と「阪急うめだ本店」。両者の運営会社の決算を基に、それぞれの戦い方を分析します。

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三越伊勢丹の成長戦略

 三越伊勢丹の成長を支えているのが、顧客一人一人との関係を深める「個客業」と、富裕層との強固な関係性を生かした「外商」の2つです。

顧客を深掘りする「個客業」への転換

 三越伊勢丹の戦略を語るうえで欠かせないのが、「マスから個へ」の転換です。

 従来の百貨店は、不特定多数の来店客を集めて商品を販売する「館業」が中心でした。しかし、インターネットの普及によって顧客が事前に情報収集を行うようになり、マスマーケティングだけでは成長が難しくなっています。

 そこで同社は、一人一人の顧客と関係を深める「個客業」への転換を進めてきました。

 その中核となるのが、エムアイカード(三越伊勢丹グループが発行するクレジットカード)や、三越伊勢丹アプリを活用した「識別顧客」の拡大です。識別顧客とは、カードやアプリを通じて属性や購買履歴、行動パターンなどを把握できている顧客を指します。顧客理解を深めることで、顧客に合わせた商品情報やサービスを提供しやすくなります。

 こうした取り組みにより、識別顧客数は2018年度末の332万人から2025年度末には835万人へと増加しました。また、エムアイカードと三越伊勢丹アプリの双方を利用する顧客の年間購買額は、非識別顧客の約10倍に達しています。


識別顧客数が順調に拡大している(画像:三越伊勢丹ホールディングス「2026年3月期(25年度)決算説明会」PDFより)

 伊勢丹新宿本店の売上高が4000億円を突破した背景には、こうした顧客との継続的な関係構築があるといえるでしょう。

データに支えられる外商

 もう一つ、三越伊勢丹の強みとして外商の存在が挙げられます。

 長年にわたり築いてきた顧客との信頼関係に加え、多様な富裕層を顧客基盤として取り込んでいる点に特徴があります。例えば、日本橋三越本店は老舗企業のオーナーや資産家、医師などとの強固なネットワークを持つ一方、伊勢丹新宿本店は若い経営者や高所得世帯などを含む新たな富裕層の来店が多いとされています。

 伝統的な富裕層と新しい富裕層の双方を顧客基盤としていることは、同社の大きな強みといえるでしょう。

 さらに、伊勢丹新宿本店や日本橋三越本店には、高級時計や宝飾品、ラグジュアリーブランドなど高額商品の品ぞろえが充実しており、富裕層の多様なニーズに応えられる環境が整っています。

 加えて、個客業で蓄積した顧客データも外商活動に活用されています。顧客の購買履歴や嗜好(しこう)を踏まえた提案が可能になるため、顧客との関係をさらに深めやすくなっています。

 「顧客との強固な関係性」「高額商品の商品力」「データ活用」の3つを組み合わせることで、三越伊勢丹は高い収益力を実現しているのです。こうした「個客業」と外商戦略の積み重ねが、売上高が微減となる中でも営業利益を伸ばした要因の一つといえるでしょう。

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