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情シスが「日本1位のAIスパコン」作るまで 猶予は4カ月、ソフトバンク“社長プロジェクト”の舞台裏(2/2 ページ)

ソフトバンクのスパコンが、AI計算性能で国内1位を獲得した。実は、これを開発したのは「情シス」のメンバーだった。“社長プロジェクト”に挑んだメンバーの奮闘を追う。

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初号機がついに完成 宮川社長から「ねぎらいの言葉」

 構築チームの奮闘によって、ついにCHIE-1が出来上がった。目標としていた8月から繰り下げとなった9月以降に、完成した分から段階的にAIモデル開発チームに提供。10月31日に、CHIE-1の本格稼働を伝えるプレスリリースを発信した

 AIモデル開発チームからは、喜びの声が届いたという。「こんなに早く、この規模のスパコンを使えるとは」など驚きの反応も多かった。

 宮川社長からも、ねぎらいの言葉をもらったと種邑さんは明かした。CHIE-1は「社内のプレゼン資料」「対外発表時の資料」「福山雅治さんが出演するCM」などさまざまな場所で紹介されて「ソフトバンクの顔の一つになった」(種邑さん)という。

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完成したCHIE-1(提供:ソフトバンク)

目指せ、スパコン構築の内製化

 CHIE-1を完成させたソフトバンクは、後継となる2〜3号機を開発した。2024年11月に発表されたスパコン性能の世界ランキング「TOP500」で「CHIE-2」は国内3位(世界17位)、「CHIE-3」は国内2位(世界16位)を獲得した。このとき、国内1位の座には富岳があった。

 性能向上に加えて、ソフトバンクが注力したのが「内製化」だ。大規模なスパコン開発では、システムインテグレーター(SIer)の協力を得るケースが多い。しかし種邑さんたちは、自前でシステムを設計し、各ベンダーに構築を発注する道を選んだ。NVIDIAの海外エンジニアと毎週打ち合わせをしたという。

 途中からプロジェクトに参画した同社の横山哲雄さん(AIクラウド開発部 部長)は、やりとりの様子をこう話す。

 「トラブルが多発するため、週次・日次でトラッキングし、チャットツールで即座に会話しました。従来のプロジェクトであればSIerが肩代わりする部分も、ソフトバンクが巻き取って主導しており、CHIE-1のときの苦労が生きていると感じました」(横山さん)

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ソフトバンクの横山哲雄さん(共通プラットフォーム開発本部 AI&HPCインフラ統括部 AIクラウド開発部 部長)(編集部撮影)

つかんだ「日本一」の称号 「性能出すため何度も試験」

 そして2025年7月、CHIE-4を完成させた。当時の最新GPU「NVIDIA Blackwell GPU」を4000基以上も搭載した大規模なシステムだ。11月にはスパコンに関する国際会議で発表された性能ランキングにおいて、AI処理性能を評価する指標「HPL-MxP」で国内1位、世界5位を獲得した。

 「ケーブルの不良などで構築時に性能が劣化してしまうことも。最大の性能を出すために何度も試験をして、結果的に1位になりました。うれしかったですね」(前田さん)

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AI性能を評価するHPL-MxPの結果。5位に「SoftBank」の名前がある(出所:HPL-MxP Mixed-Precision Benchmarkのキャプチャー)

1万基超のGPU、1220億円を投じたAIスパコンで「収益化を見据える」

 ソフトバンクが構築したAI計算基盤全体のGPUは、CHIE-4の時点で1万基を超えた。2025年12月には、追加で1224基のGPUを搭載した液冷式の新AI計算基盤が稼働。2026年3月までの累計投資額は1220億円(補助金控除後)に上る。

 この巨大なAI計算基盤を使ってソフトバンクが目指すのは「AIの社会実装」だ。5月に発表した成長戦略「Activate AI for Society」の下で「全事業領域でのAI活用」「AIの社会実装の加速」を推進する。その中核となる国産生成AIのSarashinaは、オープンソースモデルの公開や商用サービスの開始などにこぎつけた。

 同社は、AI計算基盤の構築を決断した理由について次のように説明する。

 「AIモデルそのものだけでなく、それを支える計算資源の確保が競争力の源泉になるため、自社で大規模なAI計算基盤を保有し(中略)ている。日本国内でAI開発・運用を行える環境を整備することで、企業や自治体のデータガバナンスや安全性へのニーズに応えるとともに、日本のAI産業全体の発展にも貢献したい」

 2025年10月には、AI計算基盤の計算能力をクラウドサービスとして提供する商用サービス「AIデータセンター GPUサーバー」を開始した。高性能なGPUシステムの確保が難しい企業や研究機関を支援する。同社は「2026年度以降はこれまで構築したAI基盤を活用した本格的な収益化を見据えている」とした。

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ソフトバンクのロゴ(編集部撮影)

 「AI計算基盤の構築に当たって、経済産業省から補助金を受けています。国内でAI基盤を確保しなければならず、これを用いて企業やAI技術を発展させようという趣旨です。私たちは国産AIモデルを作るし、GPUの計算能力を他社に提供します。こうして日本全体が盛り上がるのは、従来のITの仕事にはない考え方のため、モチベーション高く取り組んでいます」――種邑さん、前田さん、横山さんは、こう口をそろえる。

 元情シス部隊が作り上げたAI計算基盤が、日本のAI開発・AI活用を支える存在になる日が来るかもしれない。

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