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スマホも衛星通信もあるのに、なぜ「業務用無線機」はなくならないのか 売上高過去最高の無線機メーカーに聞く(3/4 ページ)

スマートフォンが生活に欠かせなくなった今も、業務用無線機の需要は途切れない。あまり知られていないこの市場は、なぜ消えないのか。世界約180の国・地域で製品が使われる総合無線機メーカー・アイコムの社長への取材から、市場の実像と、そこで選ばれ続ける企業の姿を探った。

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「割に合わないこと」をやり続ける 売上高の10%超を研究開発費に

 多様な通信手段と共存しながら、陸・海・空、さらには衛星までを一つのブランドで手がける。この幅広さを、多額の投資で支えている。

 象徴的なのが、研究開発への投資である。同社は10年以上にわたり、売上高の10%超を研究開発費に充ててきた。中岡氏によれば、直近は12%近くまで高まったという。

 背景には、創業者で現会長の井上徳造氏の「メーカーの根幹は技術であり、そこにお金を惜しむな」という考えがある。中岡氏自身、高額な測定器の購入稟議に戸惑うこともあるというが、技術への投資は止めない。「本社はかなり古い建物のままだが、技術や工場にはお金を惜しまない」と中岡氏は話す。


今後の投資計画においても、研究開発の割合がもっとも大きい(画像:アイコム「中期経営計画」PDFより)

 もう一つの土台が、創業以来貫いてきた「メイド・イン・ジャパン」だ。1ドル=75円前後まで円高が進んだ局面でも、同社は企画・設計・製造を国内で完結させる体制を崩さなかった。雇用と技術の流出を防ぐ狙いがあるが、中岡氏は実務上の利点も大きいと話す。

 設計部門と工場が同じ国にあり、同じ言語、同じ時間帯で動くことで、量産前の調整を迅速に進められる。「急いで対応してほしい」という指示一つとっても、文化や商慣習が異なれば受け取られ方にずれが生じることがある。しかし、国内であれば、その齟齬(そご)は起こりにくい。

 こうした姿勢は、事業ポートフォリオの考え方にも表れている。一般的には、成長市場へ経営資源を収集し、収益性の低い事業を縮小する方が合理的と考えられる。しかし、アイコムはアマチュア無線から業務用まで幅広い事業を展開している。

 その理由について、中岡氏は「純粋なビジネスの計算だけで割り切っているかというと、そうではない」と話す。

 例えば、祖業であるアマチュア無線だ。市場規模だけを見れば業務用無線に経営資源を集中した方が効率的にも見える。ただ、中岡氏によると、アマチュア無線向けに開発した技術やノウハウ、部品、金型などが、業務用や航空、船舶用の製品に応用できるという。

 「一見割に合わないことをやっているように見えても、それが後になって別の市場につながることがある」と振り返る。

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