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スマホも衛星通信もあるのに、なぜ「業務用無線機」はなくならないのか 売上高過去最高の無線機メーカーに聞く(4/4 ページ)

スマートフォンが生活に欠かせなくなった今も、業務用無線機の需要は途切れない。あまり知られていないこの市場は、なぜ消えないのか。世界約180の国・地域で製品が使われる総合無線機メーカー・アイコムの社長への取材から、市場の実像と、そこで選ばれ続ける企業の姿を探った。

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「自前主義」からの転換で挑む、次の成長

 次の成長を支える柱は、大きく2つある。収益性の高い回線ビジネスの強化と、M&Aや事業提携を通じた事業領域の拡大だ。

 まず注力するのが、回線使用料による「ストックビジネス」である。携帯電話回線を利用するIP無線機などで回線の使用権を提供し、通信料を継続的な収入として積み上げるモデルだ。ハードウェア販売と比べて継続的な収益が見込みやすい。

 実際、2026年3月期には連結売上高の約1割(構成比10.1%)を占め、「中期経営計画2026」で示した目標を上回った。国内の契約回線数が20万回線を超える一方、海外は約5万回線にとどまる。中岡氏は「ここに伸びしろがある」とし、今後は米国と欧州での拡大を狙う。


ストックビジネスの売り上げ構成比が10%を突破。「中期経営計画2026」で示した目標を上回った(画像:アイコム「2026年3月期 決算説明会資料」PDFより)

 もう一つの柱が、M&Aや事業提携の活用だ。アイコムはこれまで、企画から設計、製造、販売までを自社で手掛ける「自前主義」を強みとしてきた。しかし、AIやアプリケーション開発、他システムとの連携などの重要性が増す中、全てを自社だけで完結させることは難しくなっている。2026年5月に公表した「中期経営計画2030」でも「事業提携の加速」と「M&Aの推進」を掲げている。

 実際、同社は音声AIスタートアップのボイットとの協業を進めている。ボイットの技術を活用したAIインカムアプリ「ICOM CONNECT」では、スマートフォンで無線機のような一斉通話ができるほか、20カ国語以上に対応する同時通訳や文字起こしといったAI機能も利用できる。自社開発であれば5年、10年かかる技術を協業によって短期間で取り込んだ。

 加えて、公共安全や防衛といった新市場への参入も進める。中期経営計画では、公共安全向けの次世代通信や防衛向け衛星通信に対応した製品の事業化を掲げており、2027〜2028年の事業化を狙う。計画では2030年3月期に売上高430億円、営業利益率10%を目標に据えている。


今後の注力テーマ(画像:アイコム「中期経営計画」PDFより)

 通信手段が多様化しても、災害や公共安全、防衛など、無線機でなければ担えない領域は残る。陸上から海上、航空、衛生までを手掛けるアイコムの歩みが示すのは「スマホ」では大体できない通信がある」ということだ。その需要が、知られざる無線機市場を支えている。

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