男女格差「着実に縮まっている」の罠 男性育休「2週間未満」が4割弱の形骸化:働き方の見取り図(3/3 ページ)
男女間の賃金格差は縮小し、女性管理職や男性育休取得率も上昇している。数字を見る限り、格差解消は着実に進んでいるように映る。しかし、その認識は本当に正しいのだろうか。男女格差の現在地を考える。
格差解消を遠ざける「足し算の視点」
男女の賃金格差縮小、女性管理職比率や男性育休取得率の上昇といった動きが見られる裏では、先人たちの努力の積み重ねやたくさんの方々の尽力がありました。0だったものが1になったのは、間違いなく大きな前進です。
ただ、いつまでも1になった喜びに甘んじたままでは1が1のまま、少し上がっても1.1や1.2程度の緩やかなペースにとどまります。ゴールを10としたときに、1が3や5へと変化していくようペースを引き上げるには、足し算から引き算へと視点を変えなければなりません。
足し算の視点では、変化する前の状態が起点になります。0だったものが1になれば歴史的前進であり、変化する前が1で、1.1になれば0.1前進したとポジティブに受け止められます。男女間の賃金格差が、5年で2.3ポイント縮んだと見るのは足し算の視点です。
一方、男女格差が是正された状態など、変化した後のゴールを起点にして差異を測るのが引き算の視点になります。0から1になっても、ゴールである10から見れば9ポイント不足です。1.1に変化しても8.9ポイントのマイナスです。男女間には、依然として23.4ポイントの賃金格差があると見なすのが引き算の視点です。
かつて一般的だった認識は「男性は働いて女性は家庭を守る」から「男性は働きながら家庭も助け、女性は家庭を守りながら家計も助ける」へと変わってきています。足し算の視点に立てば進歩です。しかし「男性も女性も同等に働いて同等に家庭を守る」といったゴール側から引き算の視点に立つと、まだ先は随分と長いことが見えてきます。
足し算の視点だと、変化前の「男性は働いて女性は家庭を守る」認識を前提に、職場体制、業務設計、家庭内分業が構築されます。女性は家庭の制約があり、昇進や昇格で不利になる。職場の上司は男性で、育休を取得するのは女性。結婚すると話し合いもなく家事や育児などの家オペレーションは妻が担当し、収入獲得は夫が担当するという世界線です。
引き算の視点の場合、職場体制、業務設計、家庭内分業は変化後の「男性も女性も同等に働いて同等に家庭を守る」といった認識を前提に構築されます。男性も家庭の制約を受け、昇進や昇格で女性が不利にならず、女性上司がいるのが普通で、10カ月以上の育休を多くの男性が取得し、結婚すると家オペレーションの分担を夫婦で話し合う世界線です。
サッカー日本代表は、いまやワールドカップ出場ではなく、優勝を目標に掲げるようになりました。チーム編成も戦術も優勝を起点に逆算して設計され、足し算で何回勝ったか見るのではなく、優勝まで必要な勝利数から引き算で見るようになります。
今後もさまざまな指標が、男女格差が縮小していると示し続けるでしょう。しかし、求められるのは「着実に進んでいる印象」の罠から抜け出し、足し算ではなく引き算の発想で、職場体制や業務設計、家庭内分業を再構築することではないでしょうか。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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