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毎月280件の改善案、ラインごとの損益公開 売上高過去最高の「無線機メーカー」を支える工場の仕組み(4/4 ページ)

無線機を国内で作り続けるアイコムの工場には、社員全員が毎月1件の改善提案を出し、ラインごとに損益が見える独自の生産方式が根付く。人手不足の時代に、改善が途切れず、現場がコストを自分ごとにする仕組みを取材した。

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ロボットへの投資、約6億円 2016年から取り組む「効率化」

 コストの見える化や改善活動に加え、和歌山アイコムの生産力を支えているのがロボット活用だ。

 将来の人手不足を見据え、同社は2016年から生産工程の自動化に取り組んできた。最初に着手したのが、無線機の調整検査工程だ。この工程では、測定器に無線機を接続し、周波数を切り替えながら、受信感度や送信出力などが規格を満たしているか確認する。以前は8台の測定器にそれぞれ作業者が付き、計8人で検査を行っていた。しかしロボット導入後は検査を無人化。測定器も3台に集約でき、人手だけでなく設備の効率も大きく向上した。

 その後も自動化を進め、2018年に部品の取り付け工程、2019年には生産量の多い機種の本体の組み立て工程にロボットを導入した。現在は、ロボットだけで組み立てを行う自動ラインが2本稼働している。これまでのロボット関連の設備投資額は約6億円に上るという。


工場内で稼働するロボット(画像:以下、アイコム提供)

 一時は、ラインの全自動化も視野に入れていたものの、多品種少量生産という生産特性から、全ての工程を機械化することが必ずしも最適ではないことも分かってきた。

 同じ作業を一定の精度で繰り返す工程はロボットが得意とすることだ。例えば、はんだ付け(「はんだ」と呼ばれる融点の低い金属を熱で溶かして流し込み、部品同士を接合する技術)や、ねじ締めといった作業を自動化すれば、品質のばらつきを抑えられる。一方で、細やかな感覚が求められる作業や、小ロット生産の商品については、人の方が柔軟に対応できる。

 現在は、人とロボットがそれぞれの得意分野を担う生産体制を構築しているという。ロボットで効率と品質を高めながら、人は柔軟な判断が求められる工程を担う。


人とロボットが協調しながら働く(画像:以下、アイコム提供)

 こうした改善活動やロボット活用を進めながら、同社が守り続けてきたのが国内生産である。

 アイコムは海外向けを含め、全製品を国内で生産している。田中氏は、その理由について「本社の開発部門と近くで緊密に連携でき、妥協のない品質と柔軟な供給ができるから」と説明する。

 実際、和歌山アイコムの工場は、大阪市にあるアイコム本社から100キロ圏内に位置する。問題が発生した際には、担当設計者がその日のうちに工場へ駆けつけ、製造現場と一緒に課題を解決することもあるという。同じ言語と価値観を共有しているため、「きれいにつくる」といった品質に関するズレも生じにくい。

 1ドル=75円前後まで円高が進んだ時期にも、同社は生産拠点を海外へ移さなかった。人件費だけで見れば、海外生産の方が有利な場面もあるだろうが、開発と製造の距離を近付けることで得られる品質や柔軟性を重視した。

 コストの見える化、改善活動、ロボット活用――こうした取り組みは全て、国内でものづくりを続けるための基盤となっている。人手不足や物価高が進む中でも、同社は現場の知恵と工夫によって競争力を維持しようとしている。

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