社員はこうして“あきらめる” 「静かな退職」に潜む2つの顔(3/3 ページ)
社員は辞めていない。しかし、心はすでに会社を離れているかもしれない。「静かな退職」には、仕事との距離を自ら選ぶ人と、会社への失望から諦める人の2つの顔がある。増え続ける“あきらめ型”が示す、組織の危険信号とは。
メンバーシップ型雇用という制度の壁
雇用契約にない「社員同士の助け合い」「時間外の対応」「転勤」をめぐり、会社と社員が衝突するケースもある。もともと「割り切って働きたい」と考えている社員に対し、これらを無理に強制すると、会社への期待を失い、モチベーションがさらに低下してしまう。
「決まりだから」と一方的に押し付けるのではなく、業務の責任範囲をはっきりさせ、給与などの待遇を見直すといった前向きな対応が必要だ。
しかし、仕事の範囲が曖昧な雇用形態(メンバーシップ型など)をとっている場合、その対応は難しくなる。
かつての終身雇用や年功序列を前提とした仕組みのまま、昇給やポストだけを削って維持している企業は少なくない。このように仕事の範囲が曖昧だと「成果に対して報酬が正当に支払われていない」という不公平感が生まれやすくなる。
つまり、企業の制度そのものに矛盾があるのだ。これでは、社員が会社に失望して「あきらめ型」になっていくのも、むしろ当然の結果であると言える。
リスクと、企業を強くする視点
静かな退職を、単なる社員個人のやる気の問題として片付けてはならない。
大切なのは、仕事とプライベートを「割り切っているだけの人」と、会社に失望した「あきらめている人」を区別して考えることだ。もし社内で「あきらめ型」が増えているなら、それは会社の制度に歪みがあるサインだと疑い、制度そのものを見直す必要がある。
具体的には、まず仕事の範囲を言葉にして明確にすることだ。そして、自分の役割を超えて貢献してくれた社員には、給与や手当などの具体的な報酬で報いるべきである。また、管理職が面倒を見る部下の数を適切な規模に抑え、対話の時間をしっかり確保することも欠かせない。こうした制度の再設計こそが、社員のあきらめを防ぎ、優秀な人材が燃え尽きずに力を発揮し続けるための投資となる。
「静かな退職」という現象を、組織を生まれ変わらせるチャンスと捉えるべきだ。人も企業も、起きている問題を「正しく知る努力」と、それから逃げずに「改善する努力」をすることこそが、何よりも重要である。
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