「AIを使うと他社と似てしまう」課題をどう乗り越える? 「プロダクトの差別化」の要点(1/2 ページ)
生成AIの普及は製品の没個性化や、個人の生産性向上によるチームの分断という課題を生んでいる。米Figmaはカンファレンスで、AI出力を人間が微調整する「素材」として扱う手法を提示。自社ルールを組織全体で共有する仕組みを実装した。個人の暗黙知を資産化する取り組みは、現場の属人化を防ぐだけでなく、無駄なAIコストを最大30%削減し価値創造を支えるものだ。
生成AIの普及により、誰もが簡単にコードやデザイン、コンテンツを生成できる時代が到来した。しかしこの裏で、実は多くの企業が新たな課題に直面している。
AIは過去のデータを学習して出力するため、生成されたものはどうしても平均的で無難な仕上がりになりがちだ。企業はAIを使うことで、自社のプロダクトが他社と似通ってしまい、市場で独自の価値を失う「コモディティ化」(没個性化)に対応する必要性に迫られている。
アプリやWebサイトなどの構築支援ツール「Figma」を提供する米Figmaは、生成AIの普及がもたらすコモディティ化に対する戦略を打ち出した。6月24〜25日(現地時間)に米サンフランシスコで開催した年次カンファレンス「Config 2026」で発表した。
同社は、AIに完成品を作らせるのではなく、AIが生成したものを人間が微調整し「素材」として扱うアプローチを示す。そして、この素材を操る過程で編み出したAIの使い方や自社独自のルールを、そのままチーム全体で共有できる仕組みを提供。個人のノウハウを組織全体の力として定着させる考え方を提示した。
生成AIによる「没個性化」の抜け出し方とは? Figmaのディラン・フィールドCEOが見解を語った。
AIによる個人の生産性向上が引き起こす「チームの分断」
同社が発表した2026年のAI調査レポートによると、プロダクト開発に携わる人の4分の3以上が「AIのおかげで以前はできなかった仕事ができるようになった」と回答しているという。
個人の作業スピードが向上した一方で、組織全体には新たな課題が生まれている。ロレダナ・クリサンCDO(最高デザイン責任者)は「顧客からは、AIによって個人の作業は非常に簡単になった一方、共同作業は完全に不可能になったという声が寄せられている」と明かす。各メンバーが別々のAIツールを使って独自のペースで作業を進めるため、チームで同じ認識を保つことが難しくなり、プロジェクトが停滞してしまう組織が急増しているという。
ディラン・フィールドCEOは「テクノロジーがかつてないスピードで加速する中、私たちは今、デザインや創造性についての実存的な問いに直面している」と語った。AIの影響は既に「個人の生産性向上」の段階を終え、チームの協働の在り方そのものに波及している。AIツールによる「チームの分断」を防ぎ、組織全体の力を底上げする仕組みづくりが企業に求められている状況だ。
完成品から「操る素材」へ 没個性化をどう乗り越える?
このチームの分断と没個性化に対してFigmaは、AIと作業空間(キャンバス)に関しての捉え方を変えるよう提案している。具体的にはAIに完成品を丸投げして作らせるのではなく、AIが生成したコンテンツを「素材」として扱い、最終的な調整は人間が担うアプロ―チだ。同社はこれを体現する具体的なプロダクト群を発表した。
具体的なアプローチの一つが、デザインとプログラムのコードを同一画面上で共存させる環境を構築することだ。従来、デザイナーが作成した画面をエンジニアが手作業でコードに翻訳する工程では、職種間の認識のズレが原因で多くの時間が失われてきた。新環境では、エンジニアがプログラムを管理しているシステムから実際のコードを直接読み込み、キャンバス上で同時に実行・比較することで、翻訳プロセスそのものを省略し、職種間の認識のズレを構造的に防ぐ。
従来は別の専門ソフトに分かれていたアニメーション制作や複雑な質感表現(視覚効果)も同一の空間に統合したという。AIに一括生成させた動きや質感を、人間がタイムラインや操作ハンドルを用いて手動で細かく微調整できる仕組みにしている。 AIによって生成されたデータを、人間がさらに加工するための「編集可能な共有素材」として管理する。
フィールドCEOは「コードはデザインの対極にあるものではなく、テクスチャーや色と同じように、誰もが意のままに形作れる素材になった」と宣言した。さらに「AIはクリエイティビティの床(最低レベル)を下げることはできるが、天井(限界)を押し上げるのは人間だ」と強調。生成AIによる大量生産時代において自社を差別化するのは、平均的で無難なAIの出力結果ではなく「人間が素材を操り、限界を突破して生み出す表現だ」と語った。
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