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「点から面へ」 右肩上がりのエスコンが「街づくり」「ファーム移転」で見据える展望

開業から3年、エスコンは右肩上がりで成長中だ。周辺では現在、新たに高級ホテルやオフィスビル、居住地の開発が進み、今後は2軍施設の移転なども控え、エスコンでの“熱気”を、より広範囲に広げていきたい考えだ。ファイターズ スポーツ&エンターテイメントに取材した。

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 北海道・北広島市は今、大きな変化の真っただ中にある。

 2023年3月、同市に開業した北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の新たな本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」(以下、エスコン)。球場を含む複合施設は「北海道ボールパークFビレッジ」(以下、Fビレッジ)という名称で親しまれている。

 オープン以降Fビレッジへの客足は途絶えず、2025年の観客動員数は459万人(前年比10%増)と過去最高を記録。そのうち約236万人は公式戦以外の来場と、野球以外のシーンでの集客も好調だ。

エスコン
(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE ANNUAL REPORT 2025

 周辺では現在、新たにホテルやオフィスビル、居住地の開発が進んでおり、2028年には新駅開業も控え、エスコンを取り巻く“街”が生まれようとしている。

 エスコンを中心とした「点の盛り上がり」を、面に広げていかなくてはいけない──こう説明するのは、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの常務取締役 事業本部 本部長の三谷仁志氏だ。今後、エスコンの熱狂をより広範囲に広げていきたいと語る。


ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの常務取締役 事業本部 本部長の三谷仁志氏(編集部撮影)

 北海道日本ハムファイターズとファイターズ スポーツ&エンターテイメントは7月2日、ファームに関する記者発表を実施する。千葉・鎌ケ谷にある2軍施設の移転先を巡っては、現在北海道の恵庭市、江別市、苫小牧市が候補に挙がっており、その行く末に注目が集まる。

 今後北海道では、エスコンに加え新ファームを拠点として、これまでよりも広域に、ファイターズの熱気が広がっていくのかもしれない。

 三谷氏と、コンシューマー統括部 マーケティング部 部長 田邊朋哉氏に話を聞いた。

「2年目のジンクス」なく、右肩上がりで成長

──2025年、Fビレッジへの来場者は459万人と過去最高を記録しましたが、好調の要因をどのように分析していますか。

三谷氏 好調の最大の要因は、顧客の体験価値が高まっていることにあると考えています。

 開業1年目はハード(施設面)で価値を感じてもらい、2年目は運営・オペレーションを固めて快適性を強化。そして3年目からは顧客データを活用し、エンターテインメント性やサービス演出に注力し、顧客満足度を向上してきました。

 新しい施設ができた際、最初はたくさんのお客さまに来てもらえますが、2年目から落ち込むのではと「2年目のジンクス」を懸念する声もありましたが、今のところ右肩上がりで推移しています。

 お客さまからのフィードバックをもとに高速でPDCAを回し、不満項目を解消し続けてきました。アンケート調査では、顧客満足度は非常に高い水準にあるため、現在は来場頻度が高い層や、特定の属性で満足度が形成されていない層など、トップ層のデータを抽出し、さらなる満足度向上のための細かい分析を進めています。

 収益面でも、利益率が高い「チケット」と「スポンサー収入」が成長しており、これが利益率に直結していると考えています。

「野球×エンタメ」で非試合日も好調

──昨年度の観客動員数459万人のうち、約236万人は公式戦以外の来場と、野球以外のシーンでの集客も好調でした。特に非観戦日で効果の大きかった取り組みはありますか?

三谷氏 メインが野球場であることから、やはり野球に関連したイベントが人気を集めました。

 日本と韓国のOB戦のほか、VTuberの『にじさんじ』『ホロライブ』がゲームソフト「プロ野球スピリッツ2024-2025」をプレーするオンラインイベントなどが好評でした。

 札幌ドーム時代にあったようなハードの使い方の制限がなく、自分たちで独自にイベント開催を決められる柔軟性が、強みとして生きています。

観戦日の来場者数はもうすぐ上限 「満員」だけが正解ではない

──観戦日の来場者数も、15万人ほど増加しましたね。

三谷氏 試合日の来場者数は、すでにキャパシティと試合数を掛けた上限値にほぼ近い状態です。

 球場は約3万5000人が収容可能ですが、フルに入れるとぎゅうぎゅうになり、顧客満足度が高まらないことが分かっているため、満員を超えてまで来場者数を増やすような方針は掲げていません。

 2万9000人から3万2000人ほどが心地よく過ごせる人数であると考えています。人数よりも、お客さまに、球場に長く滞在してもらう「滞留時間」を伸ばし、顧客満足を最大値にすることを目指しています。

──仮に来場者数を絞る場合、収益が減ってしまう可能性もあるのではないでしょうか。試合のない日、中でもイベントなどもない日の集客が重要になりそうですね。

三谷氏 大掛かりなイベントがない日でも、ふらっと訪れて「観光地」としての満足感を得られる場所を形成したいと考えています。

 球場を訪れる文化を醸成するためには、観光地としての体験価値を向上させる必要があります。

 例えばスカイツリーを訪れた際は「どういう建築工法なのか」「どういった経緯で建設されたのか」といったストーリーを知る体験があると思います。このストーリーテリングの部分を含め、(球場の)外の施設も楽しんでいただけるよう、インフラ整備を進めていきたいと考えています。

──観光で訪れた顧客をファイターズファンにするための施策などもあるのでしょうか?

三谷氏 この球場にはサウナやクラフトビール店などもあります。お客さまは必ずしも、野球が好きではないという前提で考えています。好きなものがさまざまある中で、その市場と野球市場を掛け合わせることで、イノベーションを作っていきたいです。

──多様な目的でエスコンを訪れた顧客に対し、顧客一人一人の嗜好や過去の行動に合わせたコミュニケーションを取るために、「F VILLAGE アカウント」(独自顧客ID、以下FID)を活用していますね。

田邊氏 チケット購入をはじめとする接点で、お客さまにはFIDを登録していただき、アプローチをしていきます。

 チームの成績や選手の人気に依存せず、ファンを一定数伸ばしていきたいというのが前提にあります。「月に1回、月に2回必ず(エスコンに)行きたい」と思わせることを「習慣化」と呼んでいます。デジタル・リアル両面で、エンゲージメントを高め、チケットを購入してもらえるようにアプローチを強化していきます。

 そのためには、初回の来場から2回目の来場へつなげるハードルを越えなくてはいけません。これはどんなエンタメでも同じで、体験が良ければまた来たいと思ってもらえるし、体験があまり良くないと、自分からチケットを購入してまで2回目の来場をしてもらうことは難しい。現地でどういった行動をした人が2回目の来場につながっているのか、FIDで取得するデータを、さまざまな要素から分析する必要があると考えています。

 FIDを増やすことに加え、他社とのID連携など、われわれが持っていないデータを参照し、チケットを購入しているお客さまの行動をより深いところまで分析していく方針です。この7月から、より広くデータを分析していくために、組織の変更も実施しました。予算を含め、リソースを集中させ「2回目の壁」を越えていくための広告戦略を今後も考えていきたいです。

関連記事:「外販」も視野に ファイターズ“大航海”を支える「デジタル戦略」の裏側


ファイターズ スポーツ&エンターテイメント コンシューマー統括部 マーケティング部 部長 田邊朋哉氏

点から面へ 球場以外の盛り上がりも重視

──今後エスコン施設内、施設外それぞれで収益を上げるための戦略と今後の展望を教えてください。

三谷氏 エスコン(Fビレッジ)だけを「点」として捉えるのではなく、点と点をつなげて広域な「面」にしていかなければならないと考えています。

 ファーム施設だけでなく、新たに指定管理を担うコンサート施設(※)なども活用し、顧客とのタッチポイントを増やしていけないか検討していきます。球場内だけにとどまらず、顧客体験を拡張し、家に帰ってもお客さまとつながっているような世界観を作り上げ、対象となる場所を広げていく「点から面への戦略」を進めていきたいです。

※6月4日、「北海道立総合体育センター」(愛称:北海きたえーる)または「北海道立真駒内公園」の指定管理事業への参画を検討していると発表(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント、北海道内公共施設指定管理事業への参画検討を表明

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 以上がインタビューの内容だ。

 エスコンを起点に、北広島の街はこの3年間で大きく変化している。宿泊施設や商業ビルの開業により、新たな雇用も見込まれる。現在は来場者のデータを中心に構成するFIDに、北広島で働く人々のデータも追加していく方針だ。

 開業から3年。野球場からエンタメ施設へと変化してきたエスコンは、今後“新しい街”までもを作り出すのだろうか。そして、その熱気は、新しい2軍施設の開設で北海道のより広範囲に波及していくのだろうか。今後の動向にも注目が集まる。


新駅の建設が進む(編集部撮影)

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