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「外販」も視野に ファイターズ“大航海”を支える「デジタル戦略」の裏側(1/4 ページ)

ファイターズの新球場「エスコン」には、多くの試合がある日もない日も多くの来場者が訪れる。その背景には、顧客IDを活用した1to1コミュニケーション戦略がある。その取り組みは、野球業界にとどまらない、スポーツ業界のスポンサービジネスに拡張をもたらす可能性を秘めている。

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 2023年3月、北海道・北広島市に開業した北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の新たな本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」(以下、エスコン)。新球場を含む複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」(以下、Fビレッジ)として、北広島市を盛り上げている。

 大きなLEDビジョン、豊富な飲食エリアなど、“ハード面”の魅力もさることながら、エスコンを訪れる顧客の心をつかむ理由の一つに、顧客データを活用したマーケティング戦略がある。

 ファイターズ スポーツ&エンターテイメントは公式アプリ「北海道ボールパーク Fビレッジ公式アプリ」で収集した顧客データを活用し、一人一人の趣味嗜好や過去の行動データに基づいた、1to1コミュニケーションを実現しているのだ。

 登録者数は、今年110万人に上る見込み。同社は“対来場者”の施策にとどまらない、BtoB領域での新たな収益の可能性を探っており、その取り組みはスポーツ業界のスポンサービジネスに拡張をもたらす可能性を秘めている。取材では、スポーツビジネスの底上げを目指す同社の熱い思いが垣間見えた。

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110万に上る顧客ID 試合がない日のイベント集客でも効果アリ

 同社は公式アプリの会員登録などを通じて、「F VILLAGE アカウント」という独自IDを収集している。顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」とID基盤が裏側で連携することで、顧客の好みや過去の行動に合わせた1to1コミュニケーションを実現している。

 顧客の年齢や性別といったデモグラフィックデータ(デモグラ情報)に加え、家族構成、好きな球団、来場時のチェックイン(来場登録)の回数、飲食・グッズ購入時のID提示による実データなどを収集する。

 登録のきっかけはチケット購入時がほとんどだという。2023年にアプリを開設し、会員数は2025年末までに110万人に達する見込みだ。初年度に50万人を記録して以降、年間30万人のペースで登録数を増やしてきた。

 野球チケットの購入に直結する施策としては、顧客の好きな球団の試合日程が発表されたタイミングで旅行手配やチケット購入を促す案内を送っている。

 「11月に来シーズンの試合日程を発表しました。(球団が)ビジターチームの試合を案内するのは珍しいかもしれませんが、エスコンは北海道外から遠征してきてくださる方も多いのが特徴。『旅行がてら観戦しよう』という方にも、早めに日程を教えることでぜひ来場していただきたいという思いがあります」(マーケティング部 顧客マーケティンググループ チーフ 田中義人氏)

 エスコンでは、野球の試合がない日のイベントも強化する。グルメ、推し活イベント、音楽ライブなど多彩な催しを年間を通じて展開し、年間の約90%は何らかのイベントを実施しているという(参考)。

 試合以外のイベントの集客にも、顧客データを活用。例えば「グルメ」に興味関心があると判断した顧客には、ビアガーデンやパンフェスなどのグルメ系イベントを案内している。

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顧客データを活用し、1to1のコミュニケーションを強化している。実際の事例(提供:FSE)

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