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シンガポールのドンキで飛ぶように売れる 1パック2000円の「日本産イチゴ」を支える技術とビジネスモデルとは(5/5 ページ)

品種開発から販売までを一貫して手がける農業スタートアップ、CULTA。AIと人工環境を使う高速育種でイチゴの品種開発を大幅に短縮し、独自品種を東南アジアなどに輸出する。手本は、キウイで世界市場を築いたゼスプリ。品種開発とマーケティングを一体で握る「垂直統合」で、農業の構造転換に挑む。

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120兆円市場と「農業の構造転換」

 委託生産による量産体制も拡大している。一般的なイチゴ農家の作付面積は20〜30アール(1アール=100平方メートル)ほどだ。CULTAも栽培初年度はその1戸分に相当する規模だったが、次年度には国内有数の生産法人に並ぶ約3ヘクタール(1ヘクタール=100アール)規模まで拡大する見込みだという。

 同社はイチゴの先に広がる巨大市場にも目を向けている。同社によると、気候変動の影響を受けやすい、フルーツやコーヒーなどの嗜好(しこう)作物(15品目)の市場規模は約120兆円に上るという。主食である穀物の160兆円に匹敵する。にもかかわらず、これまで品種開発は公的機関や財団が担うことが多く、民間企業の参入は少なかった。

 さらに、気候変動の影響で、春や秋にも気温が高い日が増え、イチゴの安定確保が難しくなっているという。暑さに強いなど、環境変化に対応した品種を短期間で開発できる同社の技術は、こうした環境下で大きな強みになる。


「SAKURA DROPS」(画像:CULTA提供)

 「2032年には売上高300億円」――もっとも、この数字はイチゴだけで描く目標ではない。イチゴはあくまで起点で、すでにブドウやリンゴなどのフルーツにも着手しているという。最終的には、気候変動の危機にさらされる15品目を手掛けることを目指す。

 さらなる海外展開を見据え、生産体制と知財の両面で基盤づくりを進めている。生産面ではマレーシアでの栽培を本格的に開始。2027年中に5万平方メートル規模の栽培面積の確保を目指し、供給が細る夏場の安定供給や輸送コストの削減につなげる狙いだ。

 もう一つの備えが知財だ。かつてシャインマスカットが海外で無断栽培され、歯止めをかけられなかった問題があったが、その一因は、品種名と商品名が同じだったことにある。品種名は制度上、商標登録ができないため、海外で同じ名前のまま販売されても止めにくかった。

 そこでCULTAは、品種名を「カルタT3L」とし、店頭に並ぶ商品名「SAKURA DROPS」と切り離した。商品名を商標として登録しておけば、仮に苗が外部へ流出して栽培されたとしても、「SAKURA DROPS」の名前は使えず、無断で使われた場合は差し止めを求められる。育成者権(開発された新品種を保護する知的財産権)と商標は、生産国や販売国だけでなく、苗の流出リスクが高い国も含めて国内外で出願する。生産者とは契約で苗の第三者提供を禁じるなど、流出防止策も講じている。

 品種を生み出し、育て方を支え、ブランドとして売り、その権利まで守る。CULTAは、品種開発から販売、知財までを一貫して担うことで、農業そのものの構造を変えようとしている。

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