セルフレジが抱える深刻リスク 10万円の万引きで必要な売り上げは?(1/3 ページ)
小売現場でのセルフレジの普及に大きな障害となっているのが「セルフレジ万引き」の急増。それは小売企業だけの問題ではなく、消費者にも負担が及ぶ理不尽な構造を引き起こしている。この解決こそAIの出番だ。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
近年、小売業界における人手不足の切り札として普及が進んだ「セルフレジ」。しかし今、その導入に急ブレーキが掛かっている。
実は、先行してセルフレジを積極的に取り入れていた米国の小売業界では、セルフレジを撤去して店員による有人レジに戻す動きが目立っている。日本国内でも、大手ディスカウントストアや一部のスーパーでセルフレジの運用を見直す動きが出始めている。
その最大の原因が、「セルフレジ万引き」の急増だ。
利益を吹き飛ばす「死活問題」
とりわけセルフレジの導入に熱心だったスーパー業界は、もともと「薄利多売」のビジネスモデル。売上高営業利益率はわずか1〜2%程度にすぎない。
仮に万引きによって1店当たり10万円の損害が出た場合、その損失を取り戻すために必要な売上は、50倍から100倍にあたる500万〜1000万円という意外と大きな数字になる。小売業界にとって、万引き被害はまさに死活問題なのだ。
この損失分を少しでも取り返すため、実はスーパー業界が水面下で行っているのが「商品の値上げ(の上乗せ)」。つまり一部の悪質な客による万引きによる損失を、大勢の消費者に薄く広く負担させているのが現実だ。
だから万引き被害は「他人事」ではなく、あなたの「損」になっているのだ。
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
関連記事
音楽のヤマハが「あえて聞こえにくくする」謎音声 オフィスや病院で導入進む、逆転の発想
楽器メーカーとして知られるヤマハが手掛けるのは、「音を良くする」のではなく「あえて聞こえにくくする」技術だ。会話漏れを防ぐスピーチプライバシーシステムは、病院や企業で導入が拡大。コロナ後のオフィス環境の変化を追った。
焼肉店はなぜ急に苦しくなった? ロピアの急成長で見えてきた「新たな競合」
焼肉店の倒産件数が、統計開始以来2年連続で過去最多を更新した。大手チェーンの「焼肉きんぐ」がひとり勝ちになっているかと思いきや、焼肉店キラーといえるのは……。
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
庶民の味方である立ち食いそばに、外国人観光客が押し寄せる現象が起きている。外国人観光客お断りを示す店舗もあるが、「そば」が本当の意味でも世界に愛される日本食になるためにできることとは。
「チラシを配っても、家なんて売れないでしょ」 それでも、オープンハウスが“路上営業”を続ける理由
「チラシ配りは非効率では?」と見られがちなオープンハウスの路上営業。しかし実際には成約の3割を生み、ネット未掲載物件との出会いもある。DX化も進む現場の実像と、その合理性に迫る。
